2012/05/10

天祢涼/葬式組曲

葬儀が制限された時代に国内で唯一その習慣が残る地域の小さな葬儀屋を舞台にした連作ミステリー。

設定はかなり独特で面白いし、登場人物も個性的、ミステリーとしてもなかなか面白かった。
ただ、最後の終わり方は「え~、ここまで来てそんな展開?」という感じで今ひとつ。
話の辻褄があってないわけではないので単純に好みの問題だとは思うけど、私はもっと温かく次に繋がる雰囲気で終わって欲しかったな。
(あと、最後の話の犯人の心情がよく理解できなかったせいもあるかも)

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2012/05/09

あさのあつこ/東雲の途

「弥勒シリーズ」(というらしい。何となくピンとこない命名だな)4作目。
今までは事件が解決してもちっともスッキリしなくて読み終わるとドヨヨーンとした気持ちになることが多かったこのシリーズだけど、今回は前向きな明るい雰囲気で気持よく読了。

今までひたすら前だけを見て捨ててきた過去を忘れようと努めてきた清之介が、現在の自分の暮らしを守るためにも過去と対峙することを決意し行動する、という展開。
一つ山を乗り越えた遠野屋の笑顔が見られたのはよかった。

何故か今回は信次郎もいつもよりも丸かったような感じ。
岡っ引きの伊佐治とその家族のエピソードもとてもよかった。

前半がすごく丁寧に書いてあった分、最後のほうがちょっと駆け足になったのが残念だった。
敵方との対決シーンももうちょっと緊迫感が欲しかったな。

しかし、今までは暗い雰囲気がやだなあと思っていたのに、上手く行きだすとそれはそれで物足りないと感じてしまうという…w
わがままですね^^;

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2012/05/08

伊東潤/城を噛ませた男

戦国時代を舞台にした短篇集。

amazonなどのレビューでかなり評価が高いので読んでみたけど、私には難しかった…。
それぞれのテーマは面白いんだけど、情報が多すぎて何がどうなっているのか途中で判らなくなってしまうことが多かった。
今まであまり読んだことがなくて知識のない時代だったのと、歴史小説自体から最近ちょっと遠ざかっていたせいかも。

物語全体の日数が数日間という「椿の咲く寺」くらいのスケールだと判りやすい。

<収録作品>
見えすぎた物見 / 鯨のくる城 / 城を噛ませた男 / 椿の咲く寺 / 江雪左文字

「江雪左文字」は関ヶ原で小早川秀秋を東軍に誘い込むために尽力した板部岡江雪斎が主人公。
でも、読んでみると江雪よりもいつまでも周囲の反応ばかり気にして自分の去就を決められずグズグズしている秀秋が非常に印象的。
こんな人があの天下分け目の鍵を握っていたのだと考えると、歴史って面白いな~と思える。
(本当に秀秋がこんな人物だったかどうかは判らないけど。でもよく見かける記述なので多分当たらずとも遠からずだったんだろうな。)

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2012/05/06

小林泰三/大きな森の小さな密室

一冊の中に犯人当て、安楽椅子、日常の謎など7つのパターンの推理小説を集めた短編集。

中に「バカミス」というジャンルがあったけど、話の内容としては全編バカミスみたいなものだったw
面白くなかったわけじゃないけど、もう少し真面目なのがあってもよかったかも。

ただ、各編に登場する探偵たちはみんな個性的で面白かった。
私は貧乏弁護士の西条源治と、馬鹿には我慢がならない進藤礼都が好きだったな。

<収録作品>
大きな森の小さな密室(犯人当て) / 氷橋(倒叙ミステリ) / 自らの伝言(安楽椅子探偵) / 更新世の殺人(バカミス) / 正直者の逆説(??ミステリ) / 遺体の代弁者(SFミステリ) / 路上に放置されたパン屑の研究(日常の謎)

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2012/05/01

舞台:ミュージカル『薄桜鬼』斎藤一 篇

ゴールデンウィーク前半最終日の30日、池袋のサンシャイン劇場で「ミュージカル『薄桜鬼』斎藤一 篇」という舞台を見てきた。

劇団も役者もお話も全然知らなかったので正直あまり期待していなかったけど、けっこう面白かった。
もともとゲーム(?)が原作らしいけど、舞台としてきちんとストーリーがまとまっていて全く知識のない私でもわかり易く出来ていたし、前半1時間半、15分の休憩を挟んで後半50分、合計約2時間半の長丁場にもかかわらず、見せ場も多く笑いのテンポもよくて初めてでも最後まで飽きずに見せてもらえた。

でも何より魅力なのは役者さんでしょう。
新選組の話なので出てくるのは1人を除いて全員男性(というより「男の子」)なんだけど、みんなきれいで細くて動きもよくて殺陣もダンスも上手くて、見ていて気持よかった♪

ただ、歌はちと残念だった。
セリフはけっこうちゃんとしてるのに、歌になると急に弱くなってしまい何を言っているのか聞き取れず。
まあそれでも進行上特に問題はないわけだけど、せっかくいいシーンなのに残念だなあというところがいくつもあった。
殺陣をやりながらあれだけ歌える体力はすごいと思うんだけど、個人的には普通の舞台のが良かったな。

対して唯一の女の子千鶴ちゃん役の子は歌がすんごい上手だった!
声も綺麗だし、音程もしっかりしてて高音の伸びが素晴らしかった。
逆に演技的にはちょっとワンパターンだったけど、歌については彼女に救われていた部分かなりあったと思う。

でも、みんな真剣に、それでいて楽しそうに演じているのが印象的だった。
それだけに休日の夕方の公演なのに客席に空きが多かったのはちょっと残念。
チケットがちょっと高い(指定:7,500円)というのもあるのかな。
舞台装置も衣装もクオリティが高いのでそのくらいの値段しちゃうのは仕方ないのかもしれないけど、せめて2階席はもうちょっと値段下げたほうがいいんじゃないのかなあ。

サンシャイン劇場で5/8まで。
「ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇」(公式サイト)

しかし、このサイトの写真だけだとまったく「新選組」が出てくるようには思えないなw
でもこの舞台を見て「浅田次郎の『一刀斎夢録』を読まなくちゃ!」と思ったのだった。
連休終わったら予約しようっと。

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2012/04/30

沢木耕太郎/勉強はそれからだ 象が空をⅢ

エッセイ、コラム集。
昔読んだ文庫を再読。

沢木さんの文章は常にすっきりと力強い。
"迷っている"という文章でさえその先に向ける眼差しは真っ直ぐでゆらぎがない(ように思える)。

沢木さんが過去に1度だけゴーストライターを経験した時の話を書いた「夕立と幽霊」がよかった。
事実をそのまま書いてあるのだろうけれど、上質な短編小説のようだった。

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2012/04/26

夏川草介/神様のカルテ2

前作を読んだ時は漱石に影響を受けたという一止の口調がどうにも気になって物語に入り込めないまま読み終わってしまった本作。
その影響で続編を読むのもしばらく躊躇っていたんだけど、ふと思い立って読んでみたら…え、何?面白いじゃないですか!という感想。

一止の大学時代の親友・進藤の件も、古狐先生の件もストーリーに無理がないし、展開もすごくスムーズで読み易かった。
何よりあんなにいちいち引っかかった一止の喋りがすんなり入ってくることが驚き!
あまりの変わり様に自分でも驚くけど、楽しく本を読めたのは嬉しかった(^^)

古狐先生の顛末も沁みたけど、入院患者のトヨさんと、長年連れ添ったマゴさん夫婦のエピソードが切なくて美しくて暖かくて本当によかった。

また、家族を愛しながらも医師であるがゆえに自分をも顧みず患者第一の生活をせざるを得ない一止の前に、同じ生活によって家族を失いかけている進藤を配することがこの作品を単なる「いい話」以上のものにしていたと思う。
そしてそうしたものを全て受け止めた上での最後の一止の力強い宣言に勇気をもらえた。
医師として働く人々にあの覚悟を持続してもらうためにも、患者の立場としての私も努力しなければならないと思わせられた。

読んでよかった。

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2012/04/24

富樫倫太郎/鬼が泣く 中山伊織仕置伺帳

泣く子も黙る火付盗賊改の頭を勤める中山伊織を主人公にした連作時代小説。

三千石の旗本でありながら、礼儀にも言葉遣いにも頓着せず、ただ与えられた任務である「火付盗賊改方」の役をまっとうすることだけに心血を注ぐ。
べらんめえ口調、盗賊や狼藉者に対する容赦無い態度、弱き者正しき者自分が信じるものに対する掛け値なしの優しさ-。
こうやって書くと、伊織のキャラはなかなかカッコよくて魅力的。
でもそこに「火盗改」という役職が付いてしまうと(申し訳ないと思いつつも)どうしても過去の偉大な作品と比べてしまう。
なぜ似たようなキャラにしちゃうのかな。
火盗改の頭の任を拝命したあと、家の仏壇を叩き壊し「今日からわしは慈悲の心を捨てて鬼になる」と宣言した-というエピソードは印象的だけど、それが作品全体にうまくリンクしていなかったように思う。

それから、登場人物の使い方もちょっとぎこちない感じ。
伊織はさすがに主人公だけあってそれなりに動いてるけど、配下の同心が殆ど出てこないのがちょっと不自然。
その分、十手持ちの九兵衞の活躍が目立つけど、全体的に広がりが足りない感じがした。
面白そうな設定の登場人物も多いのでもっとそれぞれ活躍させて欲しかった。

逆に物語の本筋には絡まないけど、何故か伊織に名前を覚えられて何かというと絡まれて冷や汗をかいている町方同心の長谷川がいい味を出していて好きだったな。

それから、作品の中でいくつか似たような設定のものがあったのも残念。
よかったのは伊織の妻の姉が登場する「悋気講の夜」。
全体がきれいにまとまっていて面白かった。

多分シリーズ化されるみたいなので、他の同心たちの今後の働きを期待したい。

<収録作品>
鬼になった男 / 鬼が泣く / 密告者(いぬ) / 昔の女 / ろくでなし / 赤目の岩蔵 / 悋気講の夜 / 雷神党一件

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2012/04/21

米澤穂信/追想五断章

経済的な理由で大学を休学中の芳光は叔父の営む古本屋を手伝う条件で居候させてもらっていた。
ある日、店に訪れた女性客・可南子から、父親が書いた五つの小説を探してくれないかと依頼される。
唐突な申し出に驚く芳光だったが、彼女が提示した高額な料金と話の内容に興味を持ち叔父には黙ったまま捜索を引き受け、同じ店のバイト仲間である笙子を誘って五つの物語を探し始めるが-。

全体的にとても静かでしっとりとした物語。
芳光が失われた物語を取り戻していく過程がとても自然で説得力があった。

もともとは可南子に依頼された仕事であったはずなのに、それを実行することが芳光自身の内省に繋がり彼自身も見失った何かを見つけ出す物語になっているのもよかった。

取り戻した物語の語る真実は幸福なものではなかったけれど、その結果をすべて受け入れて凛と立つ可南子の姿が美しい。
ラストの手紙も印象的だった。

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2012/04/20

海堂尊/アリアドネの弾丸

東城大学附属病院に新設されることになった「エーアイセンター」を巡り、その主導権を握ろうとする警察が病院を潰そうと画策する。
敵の罠に嵌り窮地に陥った病院を救うため、厚生省のロジカルモンスター・白鳥が奔走する話。

最初の100ページくらいはなかなか進まなかったけど、白鳥が出て来たら急に展開が早くしかも面白くなってそこからは一気読み。
さすがロジカルモンスターw

内容も思った以上にミステリー要素が強く、かなり面白かった。
謎解きも説得力があり読み応えあり。
今回も白鳥のパワーと動き、頭脳そして喋りは素晴らしい。
それに対して田口センセは活躍の場が殆どなし。
全体を通してただ動揺して、白鳥の愚痴を言って、転寝してるだけにしか見えなかった。
しかもいくらそういう役回りとは言えいろんな場面で反応鈍過ぎ。
主人公なのに、それでいいのか?(^^;;

全体的に伏線の引き方が大胆、というかハッキリしてるなあ、という印象。
描写の仕方で「多分これは伏線なんだろうなあ」とある程度推測できるので、結果的に謎解きも何となく見えてくる部分はあった。
私のような鈍い読者にとってはそのくらいの方が楽しいけど、騙された感は今ひとつだったかな。

白鳥と島津、『イノセント・ゲリラ~』の彦根と桧山シオン、『ナイチンゲール~』の城崎と瑞人、『螺鈿迷宮』の桜宮小百合…などなど、いろんなところから続々と人が登場人物が集まってきて相変わらず賑やかな病院であった。
(小百合が人間離れしたキャラになってて怖かった…(;_:))

しかし、この話って白鳥はじめ、各分野のトップや最先端の専門家がいたから解決したわけだよね。
でも現実でこういった意思が働いた場合そんな状況になることはあり得ない。
そんな中で着せられた濡れ衣を晴らすことって一般人には無理な相談だと考えると暗澹たる気持ちになるな。

これは小説であって、現実ではそんなことはあり得ないと信じるしかない。

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