西澤保彦/実況中死~神麻嗣子の超能力事件簿
実況中死―神麻嗣子の超能力事件簿
西澤 保彦【あとがき】によるとシリーズ中の3作目の長編。
主婦・素子は雷に打たれたのがきっかけで、誰かの目を通して見た光景が見えるようになってしまう。
しばらくは興味本位でその体験を楽しんでいた素子だったが、その相手がどうやら複数の女性に対してストーカー行為をしているらしい事、そして更に雷に打たれて気を失っていたときに見た夢だと思っていた見知らぬ少女が誰かに殺される場面が事実だと言うことに気付く。
自分と繋がっているのは殺人犯に違いない、そう考えた素子は何とか狙われている女性の注意を惹こうと動き出すがなかなか思い通りにならない。
推理作家の保科が担当者の笹本が言い出したその話に興味を示したのは最近会う機会が少なくなった能解警部とチョーモンインの神麻さんに会う口実を作るためだったのだが…。
これも面白かった♪
冒頭の畳みかけるようなスピーディな展開が巧い。
素子が突発的な事故により特殊な能力を身につけて(と言う表現は実は誤りなのだけど)それによってストーカーしている誰かの存在が明らかになって、更には殺人事件まで起こっていて…あたりまでを一気に読まされてしまうので、ここまで来たら後はひたすら「この先はどうなるの~?!」って興味でグイグイ行ってしまう。
更に読者をミスリードさせる罠があちこちに張ってあって、ホントに登場人物全てが「怪しい…」と思えるような造りになっているのでウッカリ・ボンヤリ・グータラ読者の私は最後まで「結局誰が犯人なの~っ?!」と言う状態でドキドキしながら読めたのですごく楽しかった。
終盤のこれでもかっ!と繰り返されるどんでん返しも面白く読めた。
今回のは長編なのでこの間読んだ短篇よりも当然情報量も文章量も多いんだけど、テンポがよくて言葉が判りやすいので中だるみせずにサクサクと、しかもちゃんと内容を理解しながら読めるのがスゴイと思った。
特に素子の陥った状況を表現する"パス""ボディ""ソウル""デコード"などの観念が秀逸。
これって本当にそう言う観念があるのかな?それとも創作?
でも、神麻さん、保科、能解警部の3人の事件を離れたプライベートな関係の部分はあまり好きじゃないなあ。
なんだか読んでも読んでもよく判らない関係で、結局誰にも感情移入が出来ない。
ここが好きになれたらホントにすご~く楽しめるシリーズなんだろうな。
でも、逆に言うとその部分(結構分量あるんだな)が苦手でもこれだけ面白く読める作品でもある、と言うこと。
それがこの作品の力だと思う。
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