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2004/06/13

大塚ひかり/源氏の男はみんなサイテー

源氏の男はみんなサイテー
大塚 ひかり
大塚ひかり/源氏の男はみんなサイテー副題は【親子小説としての源氏物語】。
「源氏物語」を<男女関係>ではなく、<親子関係>と言う切り口で分析した源氏論。

タイトルはちょっとふざけてるし、語り口も結構軽かったりするんだけど、書いてある内容はかなり真面目。
しかも、テーマが安定しているので読みやすく、切り口も斬新でしかも説得力があるので今まで読んだ<源氏論>の中ではダントツの面白さだった。

ご多分に漏れず私も「源氏物語」って言うとつい反応してしまうタイプ。
さすがに原文は読んでないけど(昔、古典の授業でやった程度)、一応現代語訳は全巻通しで読んだ(それが橋本治訳「窯変 源氏物語」だったりする辺りが私らしい…(笑))し、他にはマンガとか、<源氏論>とか、あまり難しすぎなくて手に取りやすいものだったら結構読んでるんじゃないかな。
で、その度に例の自分勝手で相手の気持ちなんか全然気にしないくせに勝手に悩んだり傷ついたりしてばっかりいる登場人物に「あ~、もうイライラするっ!」って腹を立てていたりするわけで。
(だったら読まなきゃいいじゃん、って事なんだけどね(笑))

その点、今まであまり触れられなかった「源氏物語」に登場する男たち(もちろん光源氏も含む)のダメさ加減を徹底的に追求し、それを原文の表現や当時の慣習、また昔も今も変わらな‭い人としての心の動きなどに照らして分析していく、という内容のこの本は、その辺の苛立ちの原因を的確に、そして冷静に分析してくれるので「ああ、なるほどね」とイチイチ納得しながら、すごく面白く読めた。

中でも私が一番嫌いな「宇治十帖」での薫のグダグダさについて分析してある全3章は読み応えあり。
(ちなみにこの3章と言うのは、登場人物中一番の長さ。主人公である光源氏(全2章)よりも長い。)
それと朱雀院について書かれた『ホモ疑惑のミカド』(!?)も面白かった!

語り口は登場人物たちを辛辣に斬っているものの、その根底には彼らへの理解と共感があるため、単なる悪口には終わってないところもいい。

また文学作品としての現代語訳では読み切れない(語られない)行間に表現された感情や、慣習に則った上での行動、セリフなどへの解説も判りやすくて面白かった。

この著者は他の切り口での源氏論もいくつも書いているようなので、機会があったらそれも読んでみようと思う。

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