吉岡平/火星の土方歳三
火星の土方歳三
吉岡 平五稜郭で戦死し魂魄としての存在になってしまった、かつての新選組副長・土方歳三。
しかし、死さえも彼の「荒ぶる魂」を鎮めることはできなかった。
死して尚、斗う場所を求めた彼の目に映ったのは欧米では「戦の神」の名を持つ赤い星・火星。
「いっそ火星にでも行って、そこで再び斗いたい」そう思いながら禍つ星に手を差し伸べる土方の魂は次の瞬間、軍神マルスに抱き取られるように空間を越えたのだった…。
すっごい面白かった!
大好きです、この作品(笑)
まず、導入部がいいです。
上に書いたような「敵の銃弾によって死んでしまった土方が魂魄の存在になり遂には火星に行くまで」が10ページくらいで書かれているのですが、ここでの土方の「自分語り」と「周りの状況へのツッコミ」と「真面目に語られるボケ」に完全にココロを掴まれてしまったのでした(笑)
そう、私の土方のイメージはまさにこんな感じなのです。
(ちなみにこの3つの要素はこの後 全編に渡ってお楽しみいただけます(笑))
残された戦友や上官へのツッコミも容赦なくて「火星に行かずに、魂のまま日本の行く末をツッコミまくってくれてもいいかも」と思ったくらいでした(笑)
(そんな事をしていたらこの男はイライラして狂い出すでしょうが…^^;)
その後、火星に行ってからは場所を替え相手を替えながらとにかく斗い続けるのですが、その斗い方とか行動、考え方とかも基本的に(巷間言われているところの)「土方歳三」のキャラクターをきちんとなぞって描かれていると感じました。
しかも新選組での有名なエピソードのパロディもそこここに散りばめられているのが楽しかったです。
(特に火星の二つの月を見ながら『豊玉先生』となって句作するシーンと、後半で土方の思い通りの剣を作ることになる伝説の刀匠の名前が『ノサダ』だったところがワタシ的爆笑ポイントでした(笑))
更に後半では、行く先々で戦友となった火星の戦士達と組んで火星版・浪士隊(笑)を作ると言う展開で、「そこまでやるかっ!」と言うくらいの徹底した遊び感覚が良かったです。
あ、それから、「謎」として提示されたものが、そのまま放置されずにきちんと謎解きや解説されている辺りに、著者の生真面目さとか誠実さを見たような気がして好感がもてました。
私は自分の好きなものに対して、そこに悪意やバカにしたような意識がない限り、パロディ化されたりする事に抵抗はありません。
なのでこの作品も非常に楽しんで読めましたが、そうじゃない人はこういう土方の扱われ方はちょっとイヤかも?
その辺が平気ならば最近の新選組関連本のなかでも「異色の一冊」として読んでみるのも一興かと。
ちなみにこの作品はバローズの「火星シリーズ」のパロディ(オマージュ?)でもあるらしいのですが、私はそちらの方は読んだことがありません。
(SFってあんまり夢中になった時期がないんですよね~)
なのでその作品をベースにした箇所は普通の文章としてしか読めなかったのが残念でした。
知っていたら倍楽しめたって事ですもんね。
(逆に言うと「知らなくても楽しめた」って事でもあります)
「火星シリーズ」もかなり面白いようなので、そのうちこちらも読んだら再読してみたいと思います。
ちなみにカバー及び本文中のイラストは末弥純氏なのですが、氏のイラスト=「グインサーガ」の図式になっている(それしか知らない)私にはカバーイラストがどう見ても「イシュトヴァーン」にしか見えなかったです…(汗)
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