光原百合/十八の夏
十八の夏
光原 百合「花」をモチーフにした短篇連作ミステリー。
表題作を始めとした4篇を収録。
全編「花」をモチーフにしているので<連作>なのだろうけど、それにしては物語の雰囲気に微妙に温度差がありますね。
ただモチーフが同じってだけで、特に物語そのものに共通性を持たせる意図はなかったと言うことなのかな。
…と言うようなどうでもいいことを最初にグダグダ書いているときは「イマイチ」だったシルシです(汗)
何て言うのかな~…表現が丁寧すぎて読んでいるうちにちょっと息苦しくなってしまったんですよね。
状況とか人物をすごくきちんと丁寧に描いてあるんだけど、あまりにも細かいところまで気が配られすぎていて「別にそこまで書かなくてもいいんじゃないの?」って思ってしまう部分が割と多かったのでした。
(特に私は最近「余白」とか「行間」を想像することが面白いと思い始めたので、そういう事を強く感じてしまったのだと思うのですが。)
それからどの作品も相手との誤解や思い込みが話を意外な方向に導いていく、と言った感じの内容だったのですが、2話目と3話目に関してはその誤解の内容が読んですぐに判ってしまった、と言うのも大きい。
特に3話目は最初からどういう状況か見通せてしまって、本当にそのまま進んでいったので何だかちょっと脱力してしまったのでした。
ちょっとあれは安易すぎるんじゃないかなあ…。
(と、言うのは簡単ですが)
4話目は緊張感があり、謎も凝っていて物語自体は面白かったです。
でも、物語の雰囲気が4編の中では非常に異質。
他の3作はちょっと切なかったりほろ苦かったりしつつも明るい陽の下で爽やかに終わるのに比べて、この作品はエンディングこそ最悪の結果にはならないにしてもその全編を覆うのは非常に暗く重いテーマの作品になっています。
この4作が<連作>であるのなら、この作品をここまで重くする必要はあったのかちょっと疑問でした。
作品の雰囲気が好きだったのは2話目の「ささやかな奇跡」。
キーパーソンであるバリバリ大阪弁の元気な小学生・太郎くんが可愛かったし、穏やかで無理のないストーリー展開も映像が目に浮かぶようなエンディングの描写も良かったです。
(恐竜図鑑のくだりは笑えました!(笑))
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