逢坂剛/重蔵始末
重蔵始末
逢坂 剛火付盗賊改の加役に任ぜられた御先手鉄砲組の組頭松平左金吾の下で働く与力 近藤重蔵を主人公にした著者初の本格時代小説。
「火盗改」って言ったら不朽の名作『鬼平犯科帳』を思い出さないわけにはいかないわけで。
特に私は平蔵親分贔屓なのでどうしても「鬼平ありき」で読んでしまいました。
それから考えると人物の掘り下げ方とか感情表現とかがあっさりしすぎていて物足りなさを感じました。
と言っても同じ作品ではないわけだから表現方法はそれぞれだろうし、更にそう言った作品があると判った上で敢えて同じ舞台を設定して作品をぶつけてくる(それも初の時代小説で)と言うチャレンジャー精神は評価すべきでしょう。
それにこの主人公は後に北方探検家として名を馳せた実在の人物との事なので、著者の思惑としては火盗改の与力としての重蔵よりもその後の活躍を描くことこそが真の目的なのかも知れないですね。
続巻が出ているようなのでまた文庫になったら読んでみたいです。
とは言え。
そうした表現とか「鬼平」との比較よりも何よりも私が気になって仕方なかったのは「重蔵は21歳なのになんでそんなにおっさん臭いんだ」って事(笑)
確かに幼少の頃から「神童」と言われるほど頭が良かった事や、与力の跡取り息子として育ったとかそうなる条件というのはあるのかも知れないけどそれにしても可愛気なさすぎです。
態度や喋り方が偉そうなのはともかく、どこかにもうちょっと「弱み」みたいなものを入れておいた方が取っつきやすいと言うか感情移入し易いんじゃないかなと思ったのでした。
物語の展開自体は面白い作品が多かったです。
特に後半の「茄子と瓜」とか「猫首」は物語のモチーフが個性的で、展開もスムーズで楽しく読みました。
ただ「猫首」は最後の謎解きの説明文がちょっと長すぎたのが残念でした。
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