戸梶圭太/牛乳アンタッチャブル
牛乳アンタッチャブル
戸梶 圭太
大手の牛乳メーカー雲印乳業製の牛乳を飲んだ消費者が次々と食中毒の症状で病院に担ぎ込まれる事件が起きる。
自分の保身ばかりを考えてろくな対応が出来ない社長を始めとした経営陣を追い出し、会社を建て直すため人事部・宮部をリーダーにした「特別調査チーム」が発足した。
彼らの役割はこの事件に荷担した全ての人間に「クビ」を言い渡す事だった。
戸梶氏の作品は過去に「溺れる魚」と「ギャングスタードライブ」の2冊を読んでいるけど、どちらもすごく面白くて好きな作品だった。
どこが気に入ったかというと、「問答無用のスピード感」、「勧善懲悪なんて気にしない何でもアリな荒唐無稽さ」そして「個性的だけどシンプルなキャラクター設定」かな。
とにかく何も考えずに「こんな事あるわけないよ~っ!(笑)」とゲラゲラ笑いながら一気に読んで「あ~、楽しかった」と本を閉じる…と言うのが私の戸梶作品に対する印象だった。
この「牛乳アンタッチャブル」も本屋で最初の1~2ページを読んだところ、いつもの調子でぶっ飛ばしていたので「これだったら大丈夫」と思って読み始めたんだけど…読了してみるといつもの爽快感がない、とは言わないものの非常に希薄な作品だった。
上に書いたあらすじ(のようなもの)を読んでいただければ判るとおり、この作品はあの「雪印事件」をモチーフにしている。
それも事件の原因とか社長のコメント(「寝てないんだよ!」発言など)とか結構そのままなぞっている部分が多い。
更には時々妙にシリアスになったりちょっとお説教臭いセリフが出てきたりする部分があって、その辺を読むと戸梶氏の気持ちのどこかではこの事件と真剣に向き合いたい気持ちがどこかにあったのかな、と思われる。
それだったらそうでもいいんだけど(私が求める戸梶作品とは違うけど)、その反面社長や重役・管理職の性格や場面設定をムチャクチャにして無理矢理(?)「笑い」の方にベクトルを向けようとしている部分があったりで…要はどっちつかずであまり楽しめなかった、と言うのが正直な感想。
それに無駄にエピソードや登場人物が多くて物語の焦点がぼけてる感じがするし、何よりも主役の宮部の性格設定が私には理解出来なかったのがつまらなかった一番の要因。
宮部というのは会社を建て直そうと「特別調査チーム」を作った人事担当役員・柴田がチームのリーダーとして指名した社員なんだけど、私には最後までどうしてこの人物がリーダーで主人公なのか全く判らなかった。
会社を何とか建て直したいと言う柴田の想いに共感してその任務に当たる事を決意するわけだけど、他のチームメンバーがそれぞれ個性的でその個性に合わせた活躍をしている中で宮部だけは特に特徴がなくて何だかいつもウダウダしててる印象。
果ては途中で宮部はある事件を起こしてチームリーダーを辞め、チームからも身を引く事になるんだけど、その後になって物語がすごい勢いで動き出してその前よりも俄然面白くなってしまったのだ。
う~ん、これってもしかして作者さえも宮部の動かなさ加減に呆れていたって事では?(汗)
もっと全体を短くして(580ページは長すぎでしょう)、登場人物を絞って、完璧に「経営陣」対「社員」の図式にした方が判りやすく面白い作品になったんじゃないかな。
<関連サイト>
■戸梶圭太公式サイト「トカ ジャングル」
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 田牧大和 / 泣き菩薩(2015.07.24)
- 山本兼一 / 黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎(2015.07.23)
- 田牧大和 / 春疾風 続・三悪人(2015.07.22)
- 田牧大和 / とんずら屋弥生請負帖(2015.07.21)
- 里見蘭 / 暗殺者ソラ: 大神兄弟探偵社(2015.07.19)
「読了本」カテゴリの記事
- 田牧大和 / 泣き菩薩(2015.07.24)
- 山本兼一 / 黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎(2015.07.23)
- 田牧大和 / 春疾風 続・三悪人(2015.07.22)
- 田牧大和 / とんずら屋弥生請負帖(2015.07.21)
- 里見蘭 / 暗殺者ソラ: 大神兄弟探偵社(2015.07.19)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント