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2004/09/02

北方謙三/黒龍の柩(上下)

黒龍の柩 上
北方 謙三/毎日新聞社
北方謙三/黒龍の柩(上下)池田屋事件以来、新選組は佐幕派の先鋒として敵にも味方にも注目される存在になったが新選組が守るべき幕府の命運は既に尽きようとしていた。
新選組総長・山南は幕臣の勝海舟や小栗忠順と面識を持ち、彼らが考えるこの国の未来こそが新選組の生き残る道であると考えるようになる。
そして彼はその布石として自分の命を投げ出し、描いた夢を親友である副長・土方に託した。
土方は友のため、新選組のため、そして何よりも自分のために夢を追って北に向かうのであった。


基本的に土方視線で話は進むので、ストーリーの端々に常に「新選組」は存在しているのですが、正統な「新選組」ものとは違う感じですね。

でも逆にそのちょっと引いたところから見た感じが良かったかも知れません。
上下巻で約780ページとかなりボリュームがあるのですが、全体的に展開が早いので結構一気に読めました。

特に上巻が面白かったです。

山南さんは上巻の真ん中辺りにはもう死んでしまうのであまり登場シーンは多くないのですが、なんと言ってもこの物語の中では土方と「親友」と言う設定なので二人の、気持ちの籠もった会話のシーンがかなり多いのが印象的でした。
隊を脱走→切腹と言う彼の最期にしても、それを踏まえた上での非常に明解な回答が用意されていて判りやすかったです。
先日の「新選組!」を見て涙しながらも「何故?」と問いかけずにいられなかった私には、それが事実だったらどんなによかったか!と言う感じの理由付けでした。
(でも実際そういう状態だった、と言う説もあるらしい)

それから勝海舟。
べらんめえ口調で未来を語る元気のいい勝の存在感が圧倒的でした。
同じような役割で出てくる小栗忠順はもちろん龍馬でさえも影が薄いと言う感じ。
その分、一人江戸に取り残され薩長との交渉に疲れ果ててしまう後半の勝の憔悴ぶりが痛々しかったです。

龍馬と言えばここに出てくる龍馬は土佐弁じゃないんですよね。
これはかなり違和感がありました。
ホントはあんな喋り方だったのでしょうか…。

一転、下巻は後半の北に向かう転戦と蝦夷地での攻防はちょっとボリュームがありすぎな上に、同じようなパターンの展開が続くので正直ちょっと飽きてしまいました。
それに新選組の重要人物である近藤や沖田の死がその戦いの記述の中に埋没してしまい、あまり触れられていなかったのも少し寂しい気がしました。

ラストについてはちょっとひねってあるのですが、その前にそのまんまな状態の伏線が堂々と張られていたりしたので「もしかして?」と思っていたら、ホントにそのまんまだったので驚きはありませんでした(笑)
まあ、「お話」としては面白いかも。

それよりもその少し前に出てくる土方と徳川慶喜の別れのシーンが感動的でした。
『臆病者』と言うそしりを受けるのを覚悟の上で<非戦>の意志を貫き通し、その先の夢を見た慶喜とそれを支えようとした土方の夢が潰えた瞬間。
それでも尚、彼らは「夢のかけら」を胸に抱いて生き続けるのです。

「しかし、ともに夢を抱いた。かつてどこにもあり得なかったほどの、壮大な夢であった。その夢を持ったということだけで、私は、この世にある私の生を悔いぬ」(下巻 320pより)

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