鳥羽亮/われら亡者に候
われら亡者に候―影目付仕置帳
鳥羽 亮/幻冬社文庫文化四年春。
1年前の「丙寅の大火」により焦土と化した江戸の町に「御救党(おたすけとう)」と呼ばれる謎の集団が出没し世情を騒がせていた。
大火で富を得た商人から奪った金を焼け出された町民に分け与える「義賊」を装っていたが、そのやり口から何か別の目的があると睨んだ岩井勘四郎ら「影目付」の面々は老中・松平伊豆守の命により探索に乗り出す。
それぞれが並み以上の能力を持ちながら何らかの事情により表の世界で活躍できず「影」の存在として役目をこなす…そんな「影目付」と言う設定自体は面白いと思うのですが、作品全体の中ではその設定が今ひとつ生かされていないような感じがしました。
岩井ら影目付たちが何故「影」になったのか、その経緯は一通り描かれているもののその後は殆ど事件を追いかける描写だけで彼らの心理的表現があまりないのが物足りなかったです。
「影」でいる事への矜持と引け目、過去や現在への想い、そこから出る気持ちの揺れ…そうしたものがもう少しそれぞれの行動の片隅に描かれていると、もっと登場人物が身近に感じられたかも。
せっかく個性的なキャラクターが揃っているのに、それぞれの個性があまり生かされていないのが残念でした。
それから、一旦捕まったりすると他の仲間に迷惑をかけないために躊躇せず自害する「御救党(おたすけとう)」のメンバーというのもちょっと説得力がない気がします。
そこまで出来るようになるにはかなりの精神的な結びつきが必要だと思うのですが、その辺が描かれていなかったような…。
殺陣のシーンは書き込んであって迫力ありました。
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