« タニス・リー/闇の公子 | トップページ | リプトン グレープティー »

2004/09/20

矢崎存美/ぶたぶた日記

ぶたぶた日記
矢崎 存美/光文社文庫
矢崎存美/ぶたぶた日記見かけはどう見てもバレーボールくらいの大きさの可愛いピンクの「ぶたのぬいぐるみ」なのに、中身はちゃんと人間の妻も2人の可愛い娘もいるし、仕事も出来、人付き合いも上手な中年おじさん、山崎ぶたぶた。
そんなぶたぶたが義母の代理でカルチャースクールのエッセイ講座に通うことに。
そこで彼と出会った講師と生徒達の暖かい交流を描く短篇集。


「主人公がぶたのぬいぐるみ」な本があることは知っていましたが、何となく食指が動かずにずっと読まずにいたため私は今回がぶたぶた初体験だったわけですが…可愛かった!面白かった!
食わず嫌いしていないでもっと早く読むべきでした。

とにかくキャラクター設定が上手い(と言うかズルイ)です。
だって、主役がぶたの、しかもぬいぐるみなんですよ。
これがホントのぶたじゃない所がポイントですよね~。
で、更にその中身が子供とかじゃなくて「中年のオジサン」なのもスゴイです。
こうすることで「可愛らしさ」もあって、「説得力」もありしかも説教臭くない、と言うキャラクターが実現してるわけですね。
いやはや。

それに文章が上手いです。
全体的にぶたぶたの相手視線で描かれるので、結構地の文にも話し言葉が多いのですがこういう文体があまり得意でない私にも許せる範囲で、しかもそれがぶたぶたの魅力をきちんと引き出すように書いてあるんですよね。
これ以上だったらやり過ぎと言うラインギリギリの微妙なところで成り立っている、そんな感じです。

この作品は、カルチャースクールの講師と5人の生徒 計6人の一人一人とぶたぶたとのエピソードが一話ずつ短篇にまとめられています。
エピソード的にはぶたぶたの存在にビックリしながら一緒にお酒を飲みに行ったり、自信をなくして落ち込んでいるのを励ましてもらったり、初めてのメールを貰ったり…そんな何気ないものばかりです。
でも、そんなぶたぶたの何気ない優しさ、強さに触れた登場人物たちは、昨日とはちょっと違う自分に出会うことが出来るのです。
中には引き籠もりやリストラと言ったちょっとヘビィな内容の話もありましたが、その重さを感じさせずにサラッと、でもきちんとメッセージが伝わる内容になっていました。
これも主役がぶたぶただからなんでしょうね。

全ての短篇にエッセイ講座の宿題としてぶたぶたが書いた日記風エッセイが挿入されていたり、短篇そのものがある生徒が書いた初小説(のようなもの)だったり、更にこの作品自体が文章の書き方講座だったりする構成も楽しめました。

読み終わった後、何だか心がホンワリ温かくなって、ちょっと元気を貰ったような気分になりました。
寒くなるこれからの季節にゆったりした気分で読むのにピッタリの本です。


<関連サイト>
「矢崎電脳海牛倶楽部」
著者による個人サイト。

|

« タニス・リー/闇の公子 | トップページ | リプトン グレープティー »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

読了本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29699/1481673

この記事へのトラックバック一覧です: 矢崎存美/ぶたぶた日記:

« タニス・リー/闇の公子 | トップページ | リプトン グレープティー »