米村圭伍/退屈姫君 海を渡る
退屈姫君 海を渡る
米村 圭伍/新潮文庫五十万石の大藩・陸奥磐内藩から二万五千石の小藩・讃岐風見藩に輿入れしためだか姫は御歳十七歳。
夫である風見藩主・時羽直重が参勤交代で国許に戻っている間、おてんば姫は江戸屋敷でお留守番。
暇つぶしにお忍びであちこち遊びに出掛けているうちにひょんな事から風見藩の取り潰しを画策する田沼意次と対決し、その陰謀を見事風見藩を救ったのはつい先日の事。
またしても退屈を持てあまして面白いことを探していた姫の元に届いたのは藩主・直重が消えた、と言う大ニュースだった。
夫の、藩の一大事を救うため、めだか姫は一路ウキウキと風間藩を目指すのであった。
文庫書き下ろしの「退屈姫君」シリーズ最新刊です。
相変わらず軽快なテンポでサクサク読めて楽しめました。
何よりも何が起こっても悩んだり、困ったり、悲嘆に暮れたり、誰かのせいにして怒ったりすることなく、前向きにその問題に立ち向かっていく(と言うか「首を突っ込んでいく」?(笑)」)めだか姫の明るさが気持ちいいです。
しかも、それでただ騒いでいるだけだったらただの「傍迷惑なバカ姫様」になってしまうところですが、彼女の場合そこにちゃんと大名のお姫様、奥方様としての知恵や機転や心構えなども持った上で行動しているのが突飛な事をしても「やれやれ」と思いつつ笑って見ていられるポイントですね。
その辺りのバランスがとてもいいです。
タイトルが『海を渡る』となっていたので、「まさか、めだか姫が外国へ?!」と思ったのですがさすがにそこまでは行きませんでしたね(笑)
海を渡って行く先は夫・直重の故郷 讃岐の国でした。
でも、参勤交代で国主が国許に戻っている間の<人質>として江戸詰めが義務づけられている家族が、公儀に黙って江戸を離れる事自体お家取り潰し級の大事件なわけで…その辺はさすが、めだか姫です。
とは言っても、拉致され行方不明になっている当の直重も、その幽閉先でのんびり温泉に浸かっていたりするわけで、こちらはこちらでなかなかの人物かと…さすが、めだかを妻に持つだけありますね(笑)
お家乗っ取りの陰謀…とは言っても話の筋立てや登場人物の役割はかなりシンプルで判りやすくなっています。
そして、姫に対立する悪役もかなりステロタイプな設定。
それに対して味方側は一癖も二癖もある個性的な人物達ばかりなのです。
つまりTVの「時代劇」的なつくりかたなんですね。
文章を読んでいてもかなり視覚的な印象が強い書き方になっているので、著者もかなり意識的に書いているのではないかと思います。
ここは一つ連続ものでTV化…と言うのはちょっと難しいかも知れませんが、2時間ドラマとかくらいなら楽しい作品になりそうですね。
そうなるとめだか姫は誰かな…「あやや」とか?ちょっとベタかな(笑)
でも、みんな個性的なので誰に誰をやらせるか考えるだけでも楽しい♪
この作品の中にはシリーズの前作(『風流冷飯伝』、『退屈姫君伝』)の設定があちこちに出てきます。
軽く説明を入れながら書いてあるので前作を知らなくても全く判らないと言うことはありませんが、やっぱり読んでおいた方が楽しめると思います。
ちなみに私はどちらも読んでいるので「大丈夫!」と思っていたのですが、いざ読んでみたら前作の内容をかなり忘れていて途中「??」な部分がかなりありました(汗)
最後には直重の失踪も「乗っ取り事件」もちゃんと解決して「めでたし、めでたし」で終わるのですが、同時に次の事件への布石もバンバン打ってあって次回作への序章の序章、と言った感じのエンディングでした。
退屈姫君は次はどんな事件に巻き込まれていくのか…楽しみに待ちたいと思います。
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