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2004/11/14

舞城王太郎/みんな元気。

みんな元気。
舞城 王太郎/新潮社
舞城王太郎/みんな元気。目が覚めると隣のベッドに寝ていた姉のゆりちゃんの身体が15cmほど宙に浮いていた。
翌朝家族で話をしていたら妹の朝ちゃんも空を飛べるらしい。
その朝ちゃんが突然やって来た「空飛ぶ家族」に連れ去られてしまう。
代わりにうちにはその家族の一員だった昭が残された…。

表題作を始め「Dead for Good」「我が家のトトロ」「矢を止める五羽の梔鳥」「スクールアタック・シンドローム」の5作を収録した短篇集。

本屋さんで新刊の棚を見て歩いていたら目に入ってきたこの本。
「お、オウタロウの新刊が出てるじゃないですか」と手にとってパラパラ。
表題作の冒頭、主人公の枇杷(びわ)が空中に浮かんでいる姉のゆりを発見したときの感想、その後の両親との会話、…ページ数にして約3ページくらいを読んだのですが、ビックリでした。

その文章のテンポがとにかくすごく快感で、文章が途切れることなく頭の中にスルスル入って来るのです。
それは言葉の意味や内容がどうこうと言うことではなくて、ただリズムとかテンポとか音楽的な快感だったんですよね。
全身がブワッと鳥肌立つ感じ。
本当は「もっとこのまま読んでいたい!」と思ったのですが、私は本の立ち読みは殆どしないのでそうしている自分の状態を気持ち悪く思ってしまったせいもあってその場は何とか本を閉じてそれを買って帰ってきたのでした。

で、そのまま家に帰ってきて読み始めればその続きを体験出来たのかもしれないのですが、あいにくその先を読み始めたのは次の日。
私の魔法は既に切れてしまっていたようでした。

その後は、最初読んだときに感じたあの快感は何だったの?と思うくらい、普通の感覚しか持てませんでした。

舞城作品を読むのは『阿修羅ガール』以来なので約2年ぶりです。
その間の作品を読んでいないので、この作品が最近の舞城氏の傾向なのかそれとも違った内容なのかは判らないのですが、少なくとも私には『阿修羅ガール』までに読んだ4作の作品から抱いていた「舞城王太郎」と言う作家のイメージからはずれてきているように感じました。

もちろん、私のイメージに合わせて作品を書いているわけではないし(当たり前!)、私が読んでいない間も精力的に新作を発表されているのですからその中で作品の傾向や表現方法、主張が変わってくるのは当然だとは思うし、逆に私の感じ方の方が変わったのかもしれないのですが…デビュー作『煙か土か食い物』を読んで「すっご~いっ!」と感動して熱に浮かされたような感想を書いた私としてはちょっと哀しい気分になってしまったのでした。

この本にも全ての作品で暴力的なシーンが入っています。
バイオレンスシーンはあまり得意でない私ですが、舞城作品ではそういうシーンを読んでもそんなに嫌悪感を感じたことはありません。
この点はこの本も同じでした。
ただ、以前の作品ではそこから必然であったり言葉に置き換えることの出来ない想いが伝わってきたのに対して、今回の作品群のシーンではただそういう表記がそこにあるという感想しか持てなかったんですよね。
非常に失礼な言い方をしてしまえば「作品を舞城王太郎風にするために書いてある」としか感じられませんでした。
後半はそうしたシーンが影を潜めてしまった「スクールアタック・シンドローム」の当たり前な父子の物語な感じが、却って新鮮に思えました。

もしもこの作品が最初に読んだ舞城作品だったとしたら、他の作品を読もうとは思わなかったでしょう。
全体的にはそんな感想しか持てなかった、それだけにあの最初の3ページを読んだときの高揚感は何だったのか、それがとても気になります。

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