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2004/11/20

北森鴻/孔雀狂想曲

孔雀狂想曲
北森 鴻/集英社
北森鴻/孔雀狂想曲下北沢の駅から離れた住宅街の片隅にある古道具屋「雅蘭堂」。
この店に集まる数々の道具や美術品を巡る事件や謎を、店主である越名集治(こしな・しゅうじ)が解決する推理短篇集。
表題作を始め「ベトナム・ジッポー・1967」「ジャンクカメラ・キッズ」「古九谷焼幻化」「キリコ・キリコ」「幻・風景」「根付け供養」「人形転生」の8編を収録。


主題になる古道具(または美術品)の選び方がそれぞれ個性的で同じイメージのものがないところとか、その品物にまつわる事件や謎の深さや広がりが短篇として丁度いいところとか、物語の中に骨董商と言う職業の慣習やしきたりなどが何気なく書いてあるところとか…全編を通して、物語巧者で博識な著者らしい楽しい作品集でした。

ただ、一作目の「ベトナム・ジッポー・1967」でお店の客として登場して、その後の作品では押し掛けアルバイトとて居着くことになる女子高生・安積(あつみ)。
この少女の存在が私は苦手で、彼女が出てくるシーンはちょっとイライラしながら読みました。

物語の中で彼女は、越名と事件(謎)の関係者だけでは重くなってしまう話に軽さ・明るさを加えたり、越名に違う角度からアドバイスを与えたり話を進展させたり、読者の代わりに疑問を投げかけて物語を判りやすく説明させる、と言った役割を担っています。
そのため「骨董に詳しくなくてあまり頭も良くないけど勘が鋭く人の気持ちに敏感な現役女子高生のアルバイト」というキャラクター設定です。
私もそこまでなら特に問題がないのですが、「イヤだなあ」と感じたのは彼女が古道具店で働いていながらそこにある「物」(取り扱っているいわゆる「商品」のことです。どういう書き方がいいのか判らないので「物」と書きます)の扱いがぞんざいであると感じられる表現がかなり度々出てくるからなんですよね。
もちろん彼女も元々は何も知らない女子高生だったわけだから最初のうちはそんな状態であってもいいけど、アルバイトとしてそこに通って「物」に実際に触れる、しかも店主である越名はその仕事をただ生活のためお金のためにやっているわけではない、そういう越名に安積も懐いていると言う設定もあるわけだから、その流れとして越名の「物」に対する気持ちが安積にも伝わって少しずつ変わってくる…と言う設定であった方がよかったんじゃないかと思いました。
彼女の越名に対する信頼は物語が進むごとに強くなっているのに、その他の部分ではいつまで経っても殆ど変化がなくて、そのあたりが何だかとてもアンバランスに感じました。
著者としては「いつまでも変わって欲しくない」って気持ちの表れなのかなあ。

それ以外は分量も丁度良くて読みやすい作品集でした。
特に丁寧に書き込んだ流れの最後に何度も意外な展開が準備されている「根付け供養」は一番印象に残りました。

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