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2004/12/05

坂東眞砂子/善魂宿

善魂宿
坂東 真砂子/新潮文庫
坂東眞砂子/善魂宿人里離れた山奥に建つ合掌造りの大きな家。
かつては何十人もの大家族が住んでいたその家に、今は少年・栄吉がその母と二人きりで暮らしていた。
時々峠を越えようとして道に迷った旅人が立ち寄るだけで人との交流は殆どない。
一夜の宿のお礼代わりに旅人たちが語る「里の話」を聞く母子。
やがて母は少年にその大きな家に秘められた昔話を語り始める。

白川郷の大家族制の成立と崩壊を男女の性とそこに存在した因習を中心に描いた連作短篇集。


坂東氏の作品は随分前に(確か)『狗神』を読んだきり。
しかも『狗神』は内容や文章が好みに合わなくて途中で放り出してしまったので、一冊ちゃんと読み終わったのは今回が初。
何となく雰囲気的に「暗い」とか「重い」と言うイメージがあったんだけど、この作品は「連作短篇」と言う形式だったせいか思ったよりもすんなりと読むことが出来た。

この物語はあくまで「創作」であるけれど、そのベースとなったのは過去に飛騨、白川郷の合掌造りの家で実際に生活していた20~40人もの大家族制度のある村らしい。
しかもそれが消滅してからまだ「何十年か」しか経っていないとか。
もちろんそうした家族形態が全国的なものであったとは思えないけれど、少なくともこの日本のどこかには「何十年か前」と言う手を伸ばせば届きそうな近い過去に於いて今では考えられないような家族制度が存在していた、と言う事実に驚かされた。

そして長い間その地方、その家の因習の中で守られ、育ち、それを受け継いできた大家族を構成する人々の意識が、外の世界を覗いてきたたった一人の少女の発言や行動によって揺らぎ、その「家族」としての形そのものさえも瓦解して行くとした物語が非常に印象的だった。

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