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2005/01/06

舞城王太郎/熊の場所

熊の場所
舞城 王太郎
舞城王太郎/熊の場所小学5年生の僕はある日クラスメイトのまー君のランドセルから切り取られた猫のしっぽが転がり出すのを目撃してしまう。
恐怖にかられて一旦は学校から逃げるように家に帰り着くが、以前父親から聞いたある体験談を思い出し自分の恐怖と立ち向かう決心をし、 まー君を捜し始める。

表題作と「バット男」、「ピコーン!」の中編3作を収録。


これは好き。
面白かった。

『煙か土か食い物』を読んだときのような頭をガクガク揺さぶられるような衝撃はなかったけど、 文章がスルスル~ッと頭に入ってきて最後に気持ちにちゃんと残るものがあった。

小学生とか中学生とか高校生とか、学校に行っている年齢の登場人物が出てくる物語を読むと、 どうも自分がその年齢当時の感覚と重ねてしまう部分がある。
で、何となく違和感を感じることが多い。
(年齢のわりに)「オトナすぎる」とか、逆に「子供っぽすぎる」とか。
もちろん自分とは年代や環境が全く違ったりしているし、何より「小説」なんだからもともと比べられるものではないと判ってはいるんだけど。

この本の登場人物たちもみんな学校に行っている年齢。
「熊の場所」は小学生、「バット男」は高校生、「ピコーン!」は学校には行ってないけど年齢的には(多分)高校生くらい。
でも、この本の中の登場人物たちについては全然違和感がなくてすごく自然な感じで読めた。

内容についても相変わらず暴力的な記述が多くて、実際にこんなことがあったら顔をしかめるような内容ばかり。
私の知っている学生時代とは全くどこも重なる場所がないし、今現在その年代の人たちと比べてもあり得ない状況である。
いつもだったら小説の中の表現でもあまり得意な分野ではない。
でも何故か舞城の作品だとこういう内容もサクサク読めてしまう。
それは多分、その表現の中に人間の発するマイナスの感情が入り込んでいないからだと思う。

登場人物たちは自分の置かれた状況や環境に困ったり、落ち込んだり、怒ったり、苛立ったりするけど、絶対諦めない。
何故なら、自分の人生を切り開けるのは自分だけだから。
生きている限り自分を誤魔化し続けることは出来ない。
だから、自分のオトシマエは自分で付ける。
「熊の場所」に戻って。
その、ブレのない、真っ直ぐ前を見据えた眼差しがこの作品たちに清々しい佇まいを与えていると思う。


この本に入っている3つの作品はそれぞれ段組や上下左右の余白の大きさが違ったり、 フォントが違ったりしていて一冊の本なのに物語ごとに「見た目」がかなり違う作りになっているのも面白かった。
※フォントについては、奥付のページに使用フォントが紹介してある。

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コメント

うわっ、分かります~。
自分がその年代だった頃の思考回路がよみがえってくるような感じがするんですよね。
小学生の頃って、こんな風に考えてたよねー、って。
私も舞城作品の常に前向きな姿勢が好きです。

投稿: Mana | 2005/01/09 18:21

>私も舞城作品の常に前向きな姿勢が好きです。

そうそう。
「何があっても進んでいくぜ!」って感じですよね。
「煙か土か食い物」のインパクトが大きすぎて他の作品になかなか満足出来なかったのですが、これはその次に好きな作品になりました。

投稿: tako | 2005/01/11 22:34

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