堀江敏幸/雪沼とその周辺
雪沼とその周辺
堀江 敏幸雪沼に暮らす普通の人々の生活を切り取った短篇集。
「スタンス・ドット」「イラクサの庭」「河岸段丘」「送り火」「レンガを積む」「ピラニア」「緩斜面」の7編を収録。
声高に何かを主張するわけでもなく感動させる言葉が散りばめられているわけでもないのに、読み終わると不思議と背筋が伸び、
心が安らいでいる…そんな作品だった。
作品の中にはいろいろな季節や天気が出てくるんだけど、そのタイトルのせいなのか私は読んでいる間ずっと「雪景色」のイメージがあった。
しかも降り積もる雪に音が吸収されてほぼ無音に近い状態になるように、物語の中にもシンとした静けさが満ちている。
その静けさの中で淡々と描かれるのは、「雪沼」と言う架空の町で暮らす普通の人々の生活である。
特に事件が起きるわけではない、本人とその周囲の人々にしか影響しないであろう些細な、でも大切な日々の積み重ね。
その何でもなさがとても心地よかった。
作品全体に優しさ、柔らかさを与えている登場人物の「さん」付け表記が印象的。
またそれぞれ別の物語でありながら何気ないシーンで前に出てきた物語の登場人物や出来事にわずかばかり触れることで、読んでいる私も「ああ、
あの…」と何やらご近所の縁側で茶飲み話をしているようなゆったりした気分になれた。
寒い季節に暖かい部屋で温かい飲み物をいただきながらゆったりと読むのが似合う1冊。
<以下のblogでもこの本の感想を書いていらっしゃいます>
■「るうかすの好きなこと」さん
■「ちんむー@札幌の日記」さん
■「1/365*morio0101」さん
■「コトノハ」さん
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