梨木香歩/家守綺譚
家守綺譚
梨木 香歩湖でボートに乗ったまま行方不明になった親友 高堂の家の家守を任された売れない作家・綿貫。
床の間の掛け軸の中から姿を現す親友と、その広い庭を持つ家に住む小さく優しく静かな不思議たち。
彼らと綿貫の1年間の交流を書き綴った28の物語。
面白かった。
広い庭や年を重ねた家、その周辺に現れる不思議たちに対する登場人物(隣のおかみさんや和尚さん、編集者の山内など)たちの反応がステキ。
どんな現象も生き物も、そこにあることが当然のことのように受け入れて静かに共存している様を描く淡々とした筆致が心地いい。
そんな中で主人公である綿貫はどちらかというといきなり現れる事態に時々焦ったり、狼狽えたりしてしまうことが多いんだけど、
他の登場人物たちの「これはこういうことですよ」と言われると「そういうものか」とアッサリ納得してしまう、
しかも彼が一番そうした不思議たちと心を通わせてその本当の姿を正確に把握しているように描かれているのも良かった。
また向こうの世界からやってくる親友 高堂と綿貫の会話もいい。
ちょっとズレてるんだけど、お互いが相手を思い遣っている気持ちが溢れている。
特に最後に綿貫が高堂に掛ける言葉と、その後の3行は余韻があって印象深かった。
でも何と言っても私が好きだったのは綿貫の飼い犬・ゴローだなあ。
私の中では彼は秋田犬や柴犬みたいな、
キッチリした体型で忠実な表情をした短毛の日本犬。
その、妙に人めいた彼の描写を頭の中で映像に置き換えてクスクス笑ってしまうところが何ヶ所もあった。
こんな賢く強い犬と自然の中で暮らして行けたらどんなに素敵だろうと、犬を飼ったことのない私でも思うくらい印象的な登場犬だった。
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コメント
僕の大好きな作品です。今回読んだのが3度目でした。
ゴローが鳶の羽に乗って帰ってくるところがかっこよかったですね。
投稿: toki | 2005/03/27 23:50
はじめまして。
わたしもゴロー大好きで、しばわんこを思いつつ
小説を読んでました。
犬を飼うなら名前はゴロー!決定です。
投稿: ゆうこ | 2005/03/28 10:21
■tokiさん
返事が遅くなってごめんなさい。
コメント&TBありがとうございました。
私は雪の中を「すまなそうな顔をして」去ってゆくゴローとそれを情けない顔で見送る綿貫のシーンが好きでした。
今「村田エフェンディ滞土録」を読んでいます。
こちらもステキな表現がたくさん出てきて楽しいです。
投稿: tako | 2005/04/02 12:26
■ゆうこさん
返事が遅くなってごめんなさい。
コメント&TBありがとうございました。
やっぱりゴローは日本犬ですよね♪
あのクルンとしたしっぽを嬉しそうに振って走ってくる姿が目に浮かぶようです。
投稿: tako | 2005/04/02 12:33