新世紀「謎」倶楽部/前夜祭
前夜祭
芦辺 拓 愛川 晶明日に迫った創立40周年記念学園祭の準備でS大付属高等学校は慌ただしく浮かれた空気に包まれていた。
日頃の鬱憤を忘れ全生徒が当日の成功のために最後の準備に追われていたその時、
使われる予定のない小体育館で学校に無許可のビデオ作品をゲリラ撮影していた元「探偵小説・ホラー・SF・ファンタジー・
漫画および映画その他諸々研究会」のメンバー4人は跳び箱の中から大変なものを発見してしまう。
それは厳しすぎる指導で生徒はもちろん教師からも嫌われていた教諭・五百旗田真子(いおきだ・しんこ)の他殺体であった。
殺人事件の発覚によりせっかくの学園祭が取りやめになることを恐れた4人は、学園祭が終わるまで遺体を隠すことに。
しかし、その100kgを超える遺体はその後色々な人物の手によって校内を転々と移動して…。
作家の二階堂黎人氏主宰のミステリー作家集団「新世紀
『謎』倶楽部」のメンバーによるリレー小説第2弾。
執筆陣は芦辺拓・西澤保彦・伊井圭・柴田よしき・愛川晶・北森鴻の6名。(執筆順)
この間、過去の本の感想を整理していたときに第1弾 『堕天使殺人事件』の感想を見つけて「そういえばこれ面白かった。次も読んでみよう」と急に思い立ち、図書館で借りてきた。
『堕天使~』を読んだのがもう3年近く前なので詳細についてはあまり覚えてないんだけど、全体的な雰囲気としてはこの『前夜祭』
の方が統一感があるかなあ、と言う感じ。
『堕天使~』を読んだときに感じた「作家によって文体ってこんなに違うんだ」と言う感覚があまりなくて、
全体的にかなりまとまっていて殆ど違和感なくスルッと読めてしまった。
それは、前作『堕天使~』は11名の作家が入り乱れて書いていたのに対し、今回の作品の執筆者が6人だったから、なのかな。
それに今回は時間の経過も短くて行動範囲が限られていると言うこともあるだろうし、そして何より前作が「前もっての打ち合わせ一切ナシ」
が条件だったのに、今作は「打ち合わせOK」だったことが大きな要因だと思われる。
その分、『堕天使~』の時に感じた「これからどうなるんだろ~!?」と言う感じのワクワク感にはちょっと乏しかったかな。
とは言っても、一人で書く(推理)小説とはやはり違っていて、その部分の担当者によって話の広げ方とか視点の置き方とかまとめ方、 雰囲気の作り方、キャラクターの扱いなど、それぞれに特徴が出ていて面白かった。
ラストは、推理小説のオチとしては「よく出来てはいたけどもうちょっと」と言う感想になってしまうけど、
複数で書いたもののまとめと言うことを考えに入れれば、広がった風呂敷を丁寧に端と端を合わせてキレイに畳んで「お粗末様でした」
ときちんとご挨拶していただいたような印象を受ける、とても丁寧な終わり方だった。
どのパートも重要だと思うけど、一番最初と最後、そして(担当した愛川晶氏ご自身もあとがきで書いていらっしゃるけど)
ラスト手前と言うのが特に物語としての出来不出来を決めてしまうものなのかも。
■関連記事
新世紀
「謎」倶楽部/堕天使殺人事件 (02年6月5日)
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