松井今朝子/非道、行ずべからず
非道、行ずべからず
松井 今朝子
江戸で最大の歌舞伎小屋・中村座が正月早々の火事で焼け落ちた。
役人が来る前に火事場を見に出掛けた小屋の主・中村勘三郎と小屋の使用人たちは、そこで見知らぬ男の死体を見つける。
火事に巻き込まれて死んだとは思えないその男の正体を探るうちに、歌舞伎の名門一家の過去に隠された謎が明かされていく…。
焼け落ちた芝居小屋から発見された男の正体、名門の役者一家の襲名問題に影を落とす出生の秘密、絡まり合う人間関係… と謎が幾重にも重なった物語は奥が深く読み応えがあった。
また、老境に入っても息子に名前を譲らず立て女形として君臨し続ける名優、その跡目を襲おうと火花を散らす二人の息子、 若いながら機転が利いて実直な桟敷番頭の男、ひょんなことから成り上がり今では座の運営に大きく関わっているが嫌われ者の金主、 一座の上演作品を一手に引き受ける穏やかな物腰の座付き作家、 事件の捜査に深く関わっていく万年大部屋住まいでパッとしないオコゼに似た女形、 芝居好きで一風変わった町方与力とその行動に反発を感じながら少しずつ仕事を覚えていく新米与力…などなど多彩な登場人物達も個性的であり、 かつきちんと生活感があるので読み進むうちにそれぞれに感情移入して読めたのが楽しかった。
何より「歌舞伎」と言う独特な世界の住人、それも表舞台に立つ役者の物語だけでなくその裏側でうごめくさまざまな役割の人間達を配し、 その仕事上の役割の説明をきちんと加えながらミステリーとしての面白さも失わない著者の筆力が印象的な作品だった。
<関連サイト>
■「松井今朝子ホームページ」
公式サイト
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