池上永一/バガージマヌパナス-わが島のはなし
バガージマヌパナス―わが島のはなし
池上 永一
沖縄の小さな島で産まれ育った綾乃は19歳。
人目を惹く美しさと頭の良さを持ちながら怠け者でものごとを深く考えることが嫌いな綾乃は、
のんびりした島民でさえ顔をしかめるほどの自然児だった。
そんな綾乃を理解してくれるのは86歳の大親友オージャーガンマーだけだったが、
綾乃にはなんの不満もなくこの生活がずっと続けばいいと願っていた。
ある日、綾乃の夢の中に神様が現れ「ユタ(巫女)になれ」と告げる。
修行などまっぴらな綾乃は必死で抵抗するのだが…。
第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
全編にあふれる沖縄の方言、豊かな自然、風習そして生死観…。
こういう物語を読んでいると今は同じ日本だけれど、あの島々は日本(ヤマト)とは全く別の誇り高い文化を持つ一つの「国」
なんだなあと強く思う。
その想像も出来ないような自然の中で産まれ育った少女・綾乃の魅力的なこと!
私もたいがいグータラな性格で、出来ることならば何もしないで暮らしたいことだよと夢想したりはするけれど、
その実本当にそんな環境に置かれたら不安で仕方なくなるであろうことも知っている。
それに比べて綾乃のグータラさは感動的ですらある。
なんと言っても、神様が何度も出てきて「ユタになれ!」とお告げを授けているのに、「面倒だからイヤだ!」
と思うあまり考えることを拒否して一晩寝たら忘れてしまうのだ。
そしてそれを繰り返した結果、最後には〈神罰〉を受けることになる。
「面倒なことはイヤだし、そんなこと自分には出来ないから」と拒否することは想像できるけど、
そんな重要なことをすぐに忘れてしまうという綾乃の徹底ぶりが素晴らしい。
そんな彼女の行動に遅れずに着いていくどころか、時として彼女よりもパワフルで行動力のある年の離れた大親友オージャーガンマー。
こんなオバァの存在は他ではちょっと考えられない、とても印象的な登場人物。
二人の友情物語は明るく楽しく、そしてとても切なかった。
それからオージャーガンマーとは別の意味で印象的だったのは、綾乃の敵役となる先輩ユタのカニメガおばさん。
信仰心が篤く有能だけど"がめつい"ため島の人々から敬遠されているカニメガと綾乃の闘いは真剣だけどどこかユーモラス。
その闘いのうちに知らず知らず小さな友情の芽が育っていく様子も印象的だった。
そして「ユタはなぜ拝むのか」の答えを見いだせずに相変わらず適当な毎日を送っている綾乃に神様が見せた回答。
とても単純だけど、どんなに宗教が違っても神様が変わっても「祈り」
という行為の一番根源にあるのはこういうことだよねと納得できる答えだった。
なんだか全体的にシリアスなのかコメディなのかよく判らないところをフワ~ッと漂っているような不思議なお話だったな。
それなのに何故か心に沁みる…もしかしたらそれがこの島の雰囲気なのかな~、と沖縄に行ったことのない私は思ったのでした。
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