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2005/06/19

浅田次郎/珍妃の井戸

珍妃の井戸
浅田 次郎
浅田次郎/珍妃の井戸1902年、イギリス海軍提督ソールズベリーは2年前に起こった義和団の乱を鎮圧した八ヶ国連合軍の掠奪の実体を調査するために清国に派遣された。
王族の一人載沢殿下の舞踏会に招かれた彼は、そこで出会った謎の貴婦人から驚くべき事実を告げられる。
混乱のさなか、皇帝の寵愛した美しい妃が何者かによって紫禁城内の井戸に頭から投げ込まれ命を落としたというのだ。
この事実を聞いたソールズベリーはドイツ、ロシア、日本の高官とともに、秘密裏に妃の死の真相を探り始める。


ああ、こういう話だったんだ。
タイトルもそれっぽいし、帯や裏表紙に「『蒼穹の昴』に続く~」と書いてあったりしたこともあって「同じ中国の話なんだな~」 とは思っていたけど、ここまで密接な関係の話だとは思わなかった。
『蒼穹の昴』の中にいた馴染み深い名前の登場人物がたくさん出てきていた。

でも、物語の構成は『蒼穹の昴』とは全く別物。
前作は正統派の大河歴史小説であったのに対し、この作品はミステリー仕立て。
混乱の最中に不審の死を遂げた皇帝の美しい妃<珍妃(チェンフェイ)>。
彼女を殺した犯人を捜す日英独露の高官4人に、事情を知る人物が証言する形で進んでいく。

それぞれの立場、視点、思惑の違いによって万華鏡のように変わっていく証言と、 それに振り回され次々と証言者を求めて危険な場所に入り込んでいく4人の高官たち。

証言者の独白の形で書かれた証言の部分は芥川の『藪の中』 のスタイルを彷彿とさせるけれど、 その前後に配された探偵役の4人がその証言を巡って意見を交換する様子や微妙な関係を通常の文章で描くことでもっと馴染みやすく判りやすくなっていた。

全体的にとても面白く読んだのだけれど、最初の設定(「何故この事件がそんなにも各国高官にとって重要だったのか」 「何故この4国の高官が集まったのか」)がかなりサラッと流されてしまっていて今ひとつ納得出来ないままになってしまったのが残念。
全ての登場人物はそれぞれの立場の象徴であったのだろうとは思うのだけれど…。

最後に出てきた珍妃から皇帝への心情の告白は残念ながらあまり好きじゃなかったな。
その前で終わっていた方が綺麗だったと私は思う。

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