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2005/06/05

恩田陸/蒲公英草紙-常野物語

蒲公英草紙―常野物語
恩田 陸
恩田陸/蒲公英草紙-常野物語県の南端にある小さな集落・槇村を収める大地主槇村家。
代々その槇村家の土地を借りて住んでいた医者の娘・峰子は10歳の年から数年間を生まれつき心臓が悪く外で遊ぶことも出来ない末のお嬢様・ 聡子様の話し相手として槇村家のお屋敷に通うことになる。
殆ど寝たきりであるにも関わらず明るく、聡明で、美しく、誰をも惹きつける魅力を持った聡子を始めとする個性的な槇村家の家族、 槇村家に寄宿する様々な客人たち、そしてある日突然屋敷にやってきた不思議な能力を持った一家…。
20世紀(にゅう・せんちゅりぃ)を迎えたばかりの小さな農村を舞台に子供から少女へと成長する過程で峰子が経験した出会いと別れの物語。


不思議な能力を持つ「常野」の人々を描いた 『光の帝国-常野物語』の続編。
今回は長編です。

槇村家で過ごした年月を『蒲公英草紙』と自分で名付けた日記をもとに峰子が回想するかたちで綴られた物語。
年老いた峰子の柔らかく丁寧な語り口とゆったりとしたリズムが心地いい。

また「常野」の家族が物語のキーワードとして重要な役割を担っていながらも、 決して突出することなく全体の中の一つのパーツとして物語の中に溶け込んでいるそのバランスもとても読みやすかった。

それはそのくらい槇村家を囲む人々(家族、使用人、客人たち)もまた個性的で、懐が深い人々として描かれていたということ。
それぞれの心に新しい時代への期待と不安を抱きながら、ぶつかり合い、でも相手を思い遣る心も忘れない…そんな心優しい人々。

私たちの国にかつてあったゆっくりとした時代、そして峰子自身の「輝く宝石」であった時代への郷愁。

それだけに峰子の「今」を描いた最後の3ページの内容は痛い。
特に最後の2行の問いは、そこからまた先の時代にこうして存在してしまっている私たち(質問は私たちに向けられたものではないけれど) に何が答えられるのだろうか。
もしかしたらその答えは「No」かもしれない。
でも、それであっても今に生きる私たちはその先へも行かなければならないのだから。
もちろん、少しでも「Yes」と言えるようにそれぞれの心に願いながら。

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コメント

はじめまして、kayo***と申します。
本好きpeopleから時々おじゃましてます ^ー^。

最後の数ページ、そして最後の2行への思いは私も同感です。
時代の節目の憂いはいつの世も同じなのかな、と。

TBさせてもらいました。また覗きに来ますね。

投稿: kayo*** | 2005/06/05 21:06

■kayo***さん

こんにちは。
コメント&TBありがとうございました(^^)

実は私もkayo***さんのブログはRSSリーダーに登録して読ませて頂いてました。

これからも宜しくお願いします。

>最後の数ページ、そして最後の2行

あの部分って難しいですよね。
なければ(哀しい部分はあるものの)単にふんわりした「いい物語」になってしまうし、でもあればあったで違和感が残るし…。
恩田さんはその"違和感"をこそ表現したかったのかもしれませんが。

投稿: tako | 2005/06/05 22:08

はじめまして、りすまごと申します。

takoさんのブックレビュー、参考にさせて頂いています。今は、「ラッシュ・ライフ」の予約をしているところです。

恩田陸さんの常野の続き、ずっと楽しみにしていましたが、やっと出たんですね。「蒲公英草紙」、早速探してみます。ありがとうございました。

投稿: りすまご | 2005/06/06 00:56

■りすまごさん

こんにちは、コメントありがとうございます。

>参考にさせて頂いています。

ありがとうございます!とても励みになります♪

『蒲公英草紙』はふんわりした雰囲気の奥に深い哀しみを秘めた物語でした。
どうぞ堪能して下さいね。

これからも気軽にコメントしに来て下さいね。
お待ちしています(^^)

投稿: tako | 2005/06/06 22:23

こんにちは。
蒲公英草紙、takoさんの購入メモを読んで買いに走りました。
『光の帝国』の後書きに書かれていた続きも早く読みたいものです。
TBさせていただきました。のですが、また二度送ってしまいました(T_T)すみません…。
TBポリシーの件も参考になってます〜(まだまだ考え中ですけども)。

投稿: suminiya | 2005/06/10 03:42

■suminiyaさん

>takoさんの購入メモを読んで買いに走りました。

出版されたばかりの作品はやはり注目度が高いようですね。
アクセス解析でもこの本のタイトルで検索して来て下さる方が最近とても多いです。

コメント&TBありがとうございました。
こちらからも送らせて頂きますね(^^)

投稿: tako | 2005/06/10 23:55

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