恩田陸/図書室の海
図書室の海
恩田 陸
著者初のノン・シリーズ短篇集。
『六番目の小夜子』の番外編である表題作を始め、『春よ、こい』『茶色の小壜』『イサオ・オサリヴァンを捜して』『睡蓮』『ある映画の記憶』
『ピクニックの準備』『国境の南』『オデュッセイア』『ノスタルジア』の全10編を収録。
中には作品としてちゃんとエンドマークが付いている作品もあるけれど、全体的な印象は「断片」という感じ。
別の場所に厳然と存在している核となる物語から派生した様々な形をした「断片」たち。
それだけでは作品全体を見渡すことは出来ないけれど、だからこそ却って作品への興味を引き出すことが出来る魅力を内包している。
巻末で山形浩生氏が「映画の予告編」を引き合いに出して解説を書いていたけど、私も読んでいる間感じていたのはそれだったな。
特に『夜のピクニック』の前夜譚である『ピクニックの準備』はその印象が強かった。
登場人物を効果的に紹介しながら、翌日から始まる日常とはちょっと違う一日の中で何かが起こりそうな<予感>をとても濃厚に感じさせる。
この先に何が起こるのだろう、と興味を抱かずにはいられない印象的な導入部。
こういう、<予感>とか<気配>は強く感じるけど実体がハッキリしない曖昧な作品っていうのも実は結構好き。
ただし、それを成立させて読者にちゃんと読ませることが出来るかどうかは、
その基になる作品の世界観や人物像がどのくらい魅力的できちんと出来上がっているかに左右される。
これだけを短篇として成立させてしまう恩田陸ってやっぱりスゴイと思う。
他には『イサオ・オサリヴァンを捜して』と『オデュッセイア』が印象的だった。
(でもイサオ・オサリヴァンって名前は好きじゃないなあ^^;イサオはいいけど、オサリヴァンとはあまり相性良くないと思う…)
(『夜のピクニック』は
映画化が準備されているようだけど、その予告編として『ピクニックの準備』の内容を映像化して流しても面白いんじゃないのかな。
そして、本編ではその予告編に出てきた映像は全く使わない…なんて案はどうでしょう(笑))
<以下のblogでもこの本の感想を書いていらっしゃいます>
■「serendipity」さん
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