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2005/07/18

三浦しをん/ロマンス小説の七日間

ロマンス小説の七日間
三浦 しをん
三浦しをん/ロマンス小説の七日間あかりは28歳、仕事は海外のロマンス小説の翻訳、5年前に知り合った恋人の神名(かんな) と半同棲中だがまだ結婚するつもりはない。
依頼された小説の翻訳に行き詰まっていた夏の日、帰宅した神名の口から突然出てきた「会社辞めてきた」 の言葉にあかりは思いがけず激しく動揺する。
更に2人の交際にいい顔をしない父親に怪我を理由に実家に呼び戻されるし、 行きつけの飲み屋で顔馴染みの女の子は神名に気がある様子… 。
思ったようにならない状況に苛立ちながら翻訳を進めるあかりの原稿はいつしか原作を離れ創作の世界へと入っていく…。


文庫の裏表紙のあらすじを読んで現代が舞台だと思って読み始めたのに、いきなり「美貌の女領主」とか「騎士」とか「国王」 とかが出てくる物語が始まって、「あれ?こういう話だったの?」とちょっとビックリ。
そして、それが20ページくらい続いた後に、急に現代に戻って本編が始まってまたビックリ。

つまりこの小説は、あかりが翻訳している中世ヨーロッパのロマンス小説と、 現実のあかりと神名の2人の物語という2組の恋人達の物語が同時進行するという構成になっているのです。

この本、昨日感想を書いた「マリア-ブランデンブルクの真珠」の直後に読んだんだけど、この順で読んで良かった。
もしこっちを先に読んでたら「マリア~」を読みながら、変なところで笑ってしまって集中出来なかったかも(笑)
特に、一般的な「ロマンス小説」の概要をまとめたくだり(p27)なんか、「全ての作品の要約はこれでOKなのでは?」と思える完璧さ。
「マリア~」もまあ、9割方こんな感じの作品だったな(笑)
逆に言うと「マリア~」を読んでいたからこそ「ああ、なるほど」と納得出来る内容もあって、 単なる偶然なんだけど我ながらいい選択だったと思う。
(自画自賛(笑))

と言っても誤解しないで頂きたいのは、この作品は別に「ロマンス小説」をバカにした作品では全くないというところ。
中世ヨーロッパを舞台にした「女領主と騎士」の物語もただの飾りで出てくるわけではなく、現実のあかりと神名の関係や状況、 あかりの心情の変化に対応するように挿入され、その中で丸々一つの物語がきちんと完結しているし、しかも「ロマンス小説」 として読んでもなかなか読ませる作品となっている。
これは単にバカにして書いたのでは出来ない技だと思う。

この著者の作品は今回初めて読んだんだけど、軽快な文章でとても読みやすかった。
(他の作品は判らないけど)この作品の特徴はやはりその文体。
あかりと神名のパートでは終始あかり視点で話が進むんだけど、 その中にあかりの喋り言葉で進む部分と普通の一人称の文体が混在していてこれがすごく効果的だった。
喋り言葉の部分で主役であるあかりの思考回路にシンクロして一気に物語に引き込まれるけど、 他の登場人物が出てくるのと同時に普通の一人称文体に変化してちょっと引いた目線での描写になる。
その切り替えがすごく自然で巧かったな。

それから、神名の性格やくせを表現する場面でのエピソードの選び方も良かった。
ケンカした後窓の外でずっと待ってる場面とか、台風の日に行こうと思ったっていうところとか。
特に食事の仕方のところと、冷蔵庫の中の食料のエピソードはちょっと吉本ばなな風な雰囲気もあって私は好きだった。
神名、いいヤツだ。私もこういうタイプに弱いかも。
しかし、問題も多いのでこういう男と付き合うのは難しいね(笑)

ということで「中世ヨーロッパ ロマンス小説」と「当世恋愛小説」を同時に楽しめる『一粒で二度美味しい』(古ッ!(笑)) お得で楽しい作品でありました。

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