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2005/07/14

森福都/吃逆(きつぎゃく)

吃逆
森福 都
森福都/吃逆(きつぎゃく)三十歳になってようやく科挙の試験に合格した陸文挙。
合格はしたものの二百七十四番という下位であったため職に就けるのはまだまだ先で相変わらず貧しい生活を続けていた。
そんな陸には吃逆(きつぎゃく=しゃっくり)をすると白昼夢のような奇妙な光景が見えたり、 思いもかけないことが閃いたりするという不思議な癖があった。
その癖を見込んだ役者ばりの美男で口の上手い周季和と名乗る人物から突然副業を持ちかけられる。
それは季和がこれから発行する「閒話小報」という新聞専任の探偵役だった。

連作短篇ミステリー。
「綵楼歓門」「紅蓮夫人」「鬼市子」の3編を収録。


前に読んだ 『十八面の骰子(さいころ)』が面白かったので、「他のも」と思って読んでみたんだけど…残念ながらこれは今ひとつ。

やっぱり中心となる陸文挙と周季和の2人の魅力がが『十八面~』に出てきた3人ほどではなかった、というのが大きいかな。

「しゃっくりをすると人には見えないものが見えて、それをヒントに謎を解く」という陸の設定は面白いんだけど、それが最初の 「綵楼歓門」以外の作品ではあまり生かされていなかったのが何より残念。
また生い立ちに秘密を持っていることから来る季和の不安定さも「魅力的」な感じには映らなくて、 逆に何度も繰り返されることでこっちが不安になる(というかちょっと苛々する)感じの揺れ方だったのが読んでいてちょっとつらかった。
その秘密の謎解きもちょっと引っ張りすぎな感じがしたなあ。

季和の不安定さの原因の一端となっているのが開封府の知事であり季和の生き別れの父でもある劉公という人物。
物語の中ではどちらかというと脇役的な存在であるけれど彼の度量の大きさや有能さ、その中に隠れる無邪気さ、そして別れた妻や子 (つまり季和母子)への深い愛情など人間的な魅力がたくさんある印象的な人物で、 私はとても好きだった。
なので、もっと早く誤解を晴らして、季和と劉公が別の関係を作りながら物語が進む方向に転換していたら雰囲気も違っていたのでは… と思うのだけど。
(多分私はそっちのほうが好きだったと思う)

終わり方には希望があったものの全体的に少々暗めな印象の作品で、期待していたものと違ってちょっとガッカリでした。

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