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2005/07/17

榛名しおり/マリア-ブランデンブルクの真珠

マリア―ブランデンブルクの真珠
榛名 しおり
榛名しおり/マリア-ブランデンブルクの真珠十七世紀半ば。
現在ドイツと呼ばれる地方は300余りの独立国家が割拠し、強い緊張関係の中で危機の時代を過ごしていた。
その中の一つで強国として周囲に恐れられているブランデンブルクの先鋭部隊ががエルベ河のほとりの小国ハルバーシュタット公国に攻め込んだ。
陣頭で指揮を執るのは若き選帝候 フリードリヒ=ウィルヘルム。
そして今まさに落ちようとしているハルバーシュタットの古城で、宰相の娘 マリアは公爵令嬢の身代わりとして城に残ることを決意する…。


中世ヨーロッパを舞台にした、いわゆるロマンス小説でございました。
しかもフリードリヒは28歳、かたやマリアは14歳…いや、いいんですが^^;

何となく表紙が気にいって買ったものの基本的に「恋愛小説」は苦手なのでホントに読めるのかな~?とちょっと心配だったんだけど、 読み始めたら意外に面白かった。
前半延々と2人の話なので「ああ、もうお腹いっぱいです」と思い始めたくらいから、 急に状況が変わって闘いが始まり城が落とされマリアは深手を負って…という波乱の展開になって、最後意外なところに落ち着いて「あら、 このまま終わるのかしら?」と思わせておいて、ラストでまたちょっとしたどんでん返しが待っている… という緩急がある構成で結構スルスルと読了しました。

まあ、何と言ってもフリードリヒでしょう。
有能で、勇敢で、腕が立って、頭が良くて、人柄が善くて、(老若を問わず)部下に信頼されていて、男前で、 女性関係にだらしないのが玉に瑕だけどそれもまた過去の哀しい思い出を紛らわすためという実は寂しい心の持ち主で同じ傷を持ったマリアに会って初めて本当の愛に気付く… 。
いやいや…カッコ良すぎて何も言うことはございません(笑)
でも、こういうテーマの場合いかに主役を魅力的に描くかが成功の鍵だと思うので、 格好良く書いたヒーローがその通りに読者のところに届くのはいいことだと思う。
特に彼の場合、ただカッコイイって説明があるだけではなくて、 何気ない言葉や行動の端々にもそれが表現されていたのでかなり感情移入して読むことが出来ました。
まあ、確かにこんなヤツが傍にいたら恋に落ちるしかないでしょう、という設定のヒーロー像でしたね(笑)

で、一方若い恋人のマリアちゃんなんですが…私はちょっと気に入らないんですよねえ。
と言っても「子供のクセに生意気!」ってことではなくて(笑)、 話が進むに連れて彼女の設定が微妙に変わってしまったのが何となく納得行かない。

マリアはハルバーシュタット公国の宰相 クレプトの娘なんだけど、母親はクレプト家の使用人なのでいわゆる「深窓の令嬢」 といった育てられ方はされず剣の訓練を受けていたり父親から「もしもの時には公爵令嬢の身代わりになれ」と申し渡されていたりしている設定。
で、初めてフリードリヒと相対する彼の寝室で、彼の隙を襲ってフリードリヒの短剣を奪い彼に斬りかかる。
そのマリアをフリードリヒは、

右に左に短剣を持ちかえて、鳥のように身軽に打ってくるマリアの技はフリードリヒをまったく驚嘆させていた。 下半身が安定している。 先ほど見た、少女にしては鍛えられた脚は、まさにこの訓練の賜物だったのだ。
「公爵令嬢が聞いてあきれる」
女性でなくとも、これほどの使い手を見たのはひさびさだった。

と賞賛しています。
ただ、百戦錬磨のフリードリヒの前ではマリアの抵抗もここまでで、その後組み伏せられ無理矢理身体を奪われてしまう。
その後、いろいろ紆余曲折があり2人はお互いに運命の相手として惹かれていき…という(ありがちな)展開なわけ。

私はここでフリードリヒがマリアを「他の女性とは違う」と認識したのはマリアのこうした精神的、肉体的な強さ (とその奥に隠された弱さ、 哀しみ)だったと思ったのですが、 その後フリードリヒとマリアがお互いを受け入れていく過程の中でその強さが急激に失われてしまい単に弱々しくて幼い女の子にしか見えなくなってしまったことにとても違和感を感じました。
後半は大怪我を負いながら城を落ち延びて一人命がけで逃げていくわけだけど、 それも冒頭のように自分で運命を選び取るのではなく状況に押し流されていくだけのように見えて…。

何となくフリードリヒに会う前のマリアの方が、マリアらしかったのでは?と思わずにはいられない描写が多かった。
そうなるとフリードリヒはマリアの何が好きだったのかと。
また、フリードリヒを愛することでマリアがそう変化したのだとすれば、フリードリヒの愛し方は本当にそれでよかったのかと… そんなことを考えながら読んでいたのでした。

ある意味「源氏物語」みたいなお話ですね。
きれいでテンポのいい文章だし読後感は悪くないので、こういう設定が嫌いでなければ楽しめるのではないでしょうか。


読み終わった後で「フリードリヒって実在の人物かな~?」と思って検索してみたら、出てきたのが このページ
ひゃ~…見つけたのが読み終わってからで良かった~…^^;
これから読もうと思っている方は決して読む前に見ないで下さい。


<関連サイト>
「榛名しおり Official Website」

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