澤木喬/いざ言問はむ都鳥
いざ言問はむ都鳥
沢木 喬
大学の植物分類学の助教授で、アマチュア・オーケストラでバイオリンを弾くのが趣味の沢木敬。
彼の身のまわりで1年間に起きた幾つかの不思議な事件をまとめた短篇連作ミステリー。
表題作を始め「ゆく水にかずかくよりもはかなきは」「飛び立ちかねつ鳥にしあれば」「むすびし水のこほれるを」の4編を収録。
植物とか音楽とか、その作品を構成する要素は決して嫌いじゃなくむしろとても興味のあることだし、
それを表現する文章もとても丁寧できれいに書かれた作品だった。
でも残念ながら印象は今ひとつ。
何故かというと全体的な雰囲気と、
その中で起こる事件の持つ<性質>のバランスがどうにもしっくりこなくて何となく納得がいかないまま読了してしまったから。
植物や音楽を扱っているだけあって全体的には「静か」とか「柔らかい」といった印象なんだけど、事件(謎)は
(ミステリーなのでネタバレは止めておくけど)なんだかどれも結構きな臭い話ばかりだったんだよね。
もちろん、何が起こるのもフィクションなんだからアリだと思うけど、
こんな柔らかい雰囲気の作品の中で起こるならもうちょっと日常的で何気ない事件でも良かったんじゃないのかと。
しかも探偵役で沢木の友人の樋口の謎解きの仕方が今ひとつスマートじゃないというか回りくどすぎるし、中にはそれは単なる妄想では?
としか感じられないのもあったのもちょっと…。
特に最後の「むすびし水のこほれるを」では、導き出される謎自体も現実感なさ過ぎで「はあ?」って感じだし、もしそれが本当だとしたら
「そこまで準備するような人たちがそんな判りやすい痕跡を残していくことはあり得ないのでは?」と普通に思ってしまうけどなあ。
事件以外の部分、植物や周囲の人物についての沢木の観察眼や、個性的な登場人物達の描写、 それぞれが別々の事件のように見えながら少しずつお互いに作用しあっていく構成などは上手く出来ていただけに残念。
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