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2005/10/04

冬木亮子/飛天闘神譚

飛天闘神譚―異伝・小野篁
冬木 亮子
冬木亮子/飛天闘神譚-異伝・小野篁

内容(「MARC」データベースより)
安倍晴明に先立つこと百有余年、怨霊うごめく平安京に、 七星剣を引っ提げて敢然と降り立った一人の天人があった。北斗七星君・破軍星揺光、またの名を参議小野篁-。 史実をもとに描いた壮大な歴史ファンタジー。

非業の死を遂げ平安京に祟りをなす怨霊となった早良親王の魂を怒りに任せて二度と蘇ることのないように消し去ってしまった北斗七兄弟の末子・ 破軍星揺光が、「もっと修行してこい」って人間界に送られ転生して生まれたのが小野篁(おののたかむら)だった…という設定。
篁の生涯と彼の生きた時代の出来事を史実に基づいて描きつつ、大和の国を蹂躙しその支配下に置こうと考える悪しき神・禍津日神 (まがつひのかみ)と揺光の闘いも折り込んであるというなかなか読み応えのある歴史ファンタジーでした。

篁は転生するときに天帝から揺光としての力を封じられているので攻撃されて結構ピンチになったりする場面もあります。
でもそこは主役ですから当然絶妙のタイミングで助け船を出してくれる人(?)が現れてうまく切り抜けていくのですが、 そういう予定調和でありつつも緩急を巧くコントロールしてハラハラ感を保ち続けている構成がとても効果的でした。

それと何と言っても人間関係の描き方が巧かったです。
死せる魂を冥界に導き再生させるのが役目でありながら好戦的で破壊的な性格であった揺光が転生した人間界で様々な人間達と出会いながら成長していくこともまたこの物語のテーマになっているため、 篁を中心に親子、友人、主従、師弟、夫婦などいろいろな関係が描かれています。
その一つ一つの描写が実に丁寧。
一度出てきた人物がその後どうなったか判らないまま全く姿を消してしまったということはなく、 主要な登場人物はみなそれぞれが物語の中で意味を持ちつつ登場し、篁と関わり、きちんと納得できる形で退場していきます。
その多くの登場人物の中でも、特に幼い頃陸奥の地で鷹狩りを教えてくれた元蝦夷の阿麻留と、 篁が遣唐使として乗り込んだ船で出会いその後篁の死後も家来として家を守ることになる石鳥との関係は優しさ、 誠実さに溢れていて心を打たれました。

ただ、 篁が生まれる前から死んだ後まで通算100年以上の間の出来事が描かれているのにその間に禍津日神との闘いは4~5回しかないのはどうなのかな、 と。
神のような存在になってしまうと(象の時間と蟻の時間のように)人間とは生きている時間のスケールが違うってことなのでしょうか。
しかもその割に手段が結構セコイのが笑えます。
だから致命傷を与えられないんですよねえ…。
あと、揺光のお兄ちゃん(泰山府君・天権)も強いならもっとマメに助けに来てくれたらいいのに…。

それより何より冥府で三千年も修行してもちっとも自分の使命を理解しなかった揺光がたった50年過ごしただけで天帝も認めるほど変わってしまうことが出来る人間界って… ある意味かなり怖いところなんじゃないでしょうか^^;

小野篁には「破軍星の下生」であり、そして「冥府判官」であるという伝説があるとのこと。
(小野家の家系図にも「閻魔庁第三の冥官」とちゃんと書いてあるらしい!)
この本では主に「破軍星の下生」としての篁が描かれていてこれはこれで面白く読んだのですが、本当は私は昼は宮廷で文官として仕事して、 夜は井戸から冥府に降りて判官の仕事をする、という働き者(?) の篁についての本が読みたかったのでその辺の記述が少なかったのがちょっと残念でした。
他に面白そうな本ないかな~。
また探してみようっと。

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