夢枕獏/陰陽師 瀧夜叉姫(上下)
陰陽師 瀧夜叉姫 (上) 夢枕 獏 |
陰陽師 瀧夜叉姫 (下) 夢枕 獏 |
出版社 / 著者からの内容紹介
都に連続する怪しげな出来事。その事件が、やがて恐るべき陰謀へ繋がり始める。都の存亡の危機に晴明、博雅が大活躍する傑作長篇 。
陰陽師シリーズ、久々の長編。
しかも上下巻。
しかも題材は「将門」…。
ということで、いつもに比べて200%くらい重量感あり。
登場人物も多いし(名前が覚えられないっ!^^;)話もこみ入っていて、
いつものようにサクサクと読み進めることが出来なかったのがちょっとストレス。
でも、文章や構成の巧さは相変わらず。
そのこみ入っているように見えた物語も、読み終わって振り返ってみると「ああ、そういうことだったのね」
と全てのエピソードが全て繋がってきちんと明らかになるように書かれているし、また、
今そこで会話している場面から何の注釈もなくいきなり回想の中の会話になってしまっても何の違和感もなく、そしてそれは回想 (過去の会話)
なんだと読んでいるこちらも瞬時に判断できてしまうところとかもあって、読んでいて「何で?」と驚いてしまうシーンなどもあった。
たくさんの種類の鬼の描写を何行にも渡って書いてあって、
まるで自分がその道の傍らでまさにその鬼たちの一匹一匹をこの目で見ているような気分にさせられる百鬼夜行のシーンも、
淡々としているのに迫力があって面白かった。
ただ、今回の作品では晴明と博雅の関係がいつもよりもちょっと遠く思える書き方だったのは寂しかったなあ。
あの親密な、でもなれあわずにお互いをきちんと尊重している感じが好きなんだけど、そういう場面があまりなかったのが残念。
これは別に2人が仲違いしたとかではなくて、二人の他に人がいるシーンが多かったため。
二人っきりのときは気が置けない喋り方をする晴明も、余人が同席している際にはきちんと博雅を立てて丁寧な言葉遣いをしている。
一方博雅は人がいようがいまいが晴明に対する言葉遣いも対応も変化なし…(笑)
まあ、博雅のほうが官位がかなり上なのだから当然か。
でも二人きりで本音で話せるのは移動する牛車の中だけ、といったような慌ただしい感じも、
この物語の不気味さとか不安を盛り上げる一つの演出になっていたことは間違いない。
(だからと言って晴明や博雅が危険な目に遭うなんてことは全く考えもしないわけだけど(笑))
瀧夜叉姫は確かに重要人物ではあるけれどタイトルになるほどの印象はなかった。
この物語は彼女よりも将門、興世王、俵藤太ら男たちの物語であったと思う。
特に「平将門」という今でも畏怖の対象として語られるけれど、何をしたのかよく判らない人物の一端を知ることが出来る、
という意味で面白い作品だと感じた。
それよりもこの物語の中で一番驚いたのは、晴明の「帝も日本国という蠱毒の壺の中から生み出された呪そのものだ」という意味のセリフ。
確かに納得できる考え方だけど…そこまで言いますか^^;
<関連サイト>
■夢枕獏公式HP---蓬莱宮---
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コメント
>ただ、今回の作品では晴明と博雅の関係がいつもよりもちょっと遠く思える書き方だったのは寂しかったなあ。
同感です~。
常に他の人が存在しているために、
どうしても「表の晴明」ばかりでしたよね。
博雅の前でだけ見せる「素の晴明」、
2人の素敵な会話がもっと見たかったなと思います。
時代小説として面白かったんですけれど、
"陰陽師モノ"としてはちょっと物足りなかったです。
投稿: KOROPPY | 2005/11/23 17:43
■KOROPPYさん
コメントありがとうございます。
晴明と博雅の(馴れ合いすぎない)親密な会話もこの物語の大きな魅力の一つですよね。
これはこれで読み応えはあったのですが、この後に読んだいつもの短篇集「太極ノ巻」のほうがやっぱり落ち着く感じで楽しめました。
(獏さんには申し訳ないですが…^^;)
これからもシリーズ楽しみですね。
投稿: tako | 2005/11/23 21:41