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2005/11/02

篠田真由美/唯一の神の御名

唯一の神の御名―龍の黙示録
篠田 真由美
篠田真由美/唯一の神の御名-龍の黙示録

内容(「MARC」データベースより)
キリストの血をかすめ取った悪霊を追い、倭の国に流れ着いた、不死の吸血鬼・龍緋比古。龍は摂政である聖徳太子と出会い、 主の面影を持つ皇子に付き従うようになったが-。二千年の時を彷徨う竜の過去を描く、シリーズ第三弾。

「龍の黙示録」シリーズ第三弾。
今回は、龍が透子はもちろんライル(ライラ)とさえまだ出会う前の遙か昔の物語。

「朝は紅茶の香り」で透子から話題を振られた龍が自分の過去の旅を語るという形で始まり、古代ローマを舞台にした 「終わりなき夜に生まれつくとも」、飛鳥時代の日本(倭)を舞台にした「唯一の神の御名」の中編2本のあと、 寝そびれた透子が夜の散歩から帰ったライルに龍とライルの出会いのエピソードのさわりを聞く「夜のやさしい獣」で終わるという体裁。
さわやかな朝のシーンから始まって、夜の静けさの中で終わるという構成がしゃれている。
また、殆どが龍の話であるにも関わらず最初と最後に透子とライル(ライラ)の2人の感情を前面に持ってくることでこの2人もまたちゃんと印象を残すようにしてあったり、3人の短い言葉の端々から少しずつその距離を縮めているのが読みとれるようになっているのも上手い。

二千年も生きてしまったからか寡黙で落ち着いていて滅多に感情を表に現さなくなってしまった(少々お疲れ気味の)西暦2000年の龍に比べて、 まだイエスを失った傷口からダラダラと血を流し続け哀しみ、憎しみ、怒り、絶望… などなど全ての負の感情に支配されるまま闘い容赦なく相手を屠っていく激しい龍の姿がとても印象的。

特に前中後編の三部で語られる龍と厩戸皇子との出会いと別れを描いた表題作は、 龍がイエスを失って以来初めて心許した人間厩戸との交流の親密さ、その彼の周りに渦巻く権力争いの物語とともに、「厩戸とイエスの共通点」 に対する指摘や蘇我馬子が厩戸の仏教と対抗するために拝火教を日本に広めようとしたとする設定など、 新しい歴史の視点を提供しくれていてとても興味深かった。

また、龍の持つ能力というのがどんどん拡大して(教わるわけでもないのに完璧にその土地の言葉を操れる、 姿を見られたくない相手には見えない、空を飛べる、瞬間移動が出来る…などなど)弱みがなくなっていく一方、 精神的な面から少しずつ逃げ道を狭めていって最後まで緊張感を失わせなかった構成は読み応えがあった。

何しろ二千年も生きているわけだから龍のエピソードは作ろうと思えばいくらでも出来そうだし、 冒頭とラストでほんの少しだけ語られたライル(ライラ)の昔話も面白そう。
まだまだ楽しめそうなシリーズである。


<関連サイト>
ゾロアスター教(拝火教)-Wikipedia
「木工房 風来舎」「Shinoda Mayumi Official Site」

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