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2005/11/23

夢枕獏/陰陽師(太極ノ巻)

陰陽師 (太極ノ巻)
夢枕 獏
夢枕獏/陰陽師(太極ノ巻)

内容(「MARC」データベースより)
秀麗なる陰陽師・安倍晴明とその朋友で笛の名手・源博雅が平安京で妖怪や悪霊の引き起こす怪奇事件に立ち向かう人気シリーズ第6弾。 『オール読物』掲載の6編を収録。

「瀧夜叉姫」の広告ページで既刊をチェックしたら、一冊だけ読んでいないのがあったので早速図書館から借りてきた。
これはいつもの通りの短篇集。
「二百六十二匹の黄金虫」「鬼小槌」「棗坊主」「東国より上る人、鬼にあうこと」「覚」「針魔童子」の六編を収録。

野の草花が生い茂った晴明の屋敷の簀子の上で酒を酌み交わす晴明と博雅。
目の前に広がる自然の美しさを博雅が愛でることから始まって、それを聞いた晴明が「呪だな…」と言い出すと博雅が 「呪の話になると何がなんだかわからなくなる」ってボヤきながらも「う、うむ…」と聞き始め、それが段々 「そう言えばこんな話を知っているか」と今回のお題の話になっていく。
そしてあらましを話し終わると「ゆこう」「ゆこう」ということになる…。
そんないつも通りの読み慣れた導入部から始まるあやかしの物語たち。

意外な展開になったり、ハラハラドキドキしたりすることはないけれど、これはこれでいいんだという安定した世界観が心地よかった。

晴明と博雅の関係は相変わらず。
ベタベタしてるわけじゃないけど、とても強い信頼で結びついている関係が気持ちいい。
読んでいると表面的にはいつも博雅が晴明に振り回されているようにも見えるけど、実は晴明の方が博雅を必要としているように思う。
「覚」のときも晴明が自分で「一緒に行くか」と誘っておいて、「絶対喋るな」とか「これも持っておけ」 とわざわざ書いた護符を渡したりとかしてるんだよね。
そんな面倒なことするなら最初から一人で行けばいいのに…。
寂しがりやさんなのね(笑)

映画では完全に敵役になっていた蘆屋道満も、 本の中では敵でもなく味方でもなくただ自分の思うままに生きている自然児的なキャラクターで微笑ましい。
特に「鬼小槌」の最後で自分が思ったような報酬を晴明が受け取ってこなかったのを知って「一瞬、べそをかいたようになった」けど、 晴明が準備した酒と火桶を見て嬉しそうに笑う道満が可愛らしかった。
そんなんでいいんだったらいつもの晴明と博雅の酒宴(?)に交ぜてもらえばいいのに(笑)

今回の短篇集で一番印象的だったのは「棗坊主」。
50年ぶりに昔と変わらない姿で寺に戻ってきた恵雲に会いに行きとりとめない話をした後で、 何も言わずにただその顔を見つめるだけで相手にその本当の姿を伝えようとする晴明。
その沈黙の先にある言葉を理解し、「楽しゅうござりました」と微笑んで消えていく恵雲。
そして二人をただ黙って見つめる博雅の眼差し。
どれも何気ないけれど静かで暖かく、慈しみにあふれた表現で、読んでいるうちに泣けてきてしまった。
ほんの20ページほどの短篇だけど、最近読んだなかで一番心を揺さぶられた物語だった。

こういう物語に出会えてしまうのが、このシリーズの凄いところ。
獏さんもあとがきで「一生書いちゃうことになりそうです」と言っているので、これからも続編を楽しみに待っていたい。


<関連サイト>
夢枕獏公式HP---蓬莱宮---

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