北森鴻/桜宵
桜宵
北森 鴻
内容(「MARC」データベースより)
バー「香菜里屋」に集う人々をめぐる事件。東京・三軒茶屋の路地裏にひっそりと佇むバー「香菜里屋」のマスターが探偵役のシリーズ第2弾。 日本推理作家協会賞受賞の「花の下にて春死なむ」に続く連作集。
三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」を舞台にした連作短篇ミステリーシリーズ。
「花の下にて春しなむ」に続く第二弾。
面白かった♪
これは私にとって北森氏の数あるシリーズの中でも一番安心して読める作品かも。
他の作品で感じる登場人物への違和感が少ないし、謎の種類も(結果的にそうなってしまうものもあるけれど)いわゆる刑事事件というよりも人と人の間の微妙なボタンの掛け違い、感情のもつれによる心理的な葛藤のようなものが殆どで、いかにもビアバーで酒の肴に話題になるのが合っている内容なのがいい。
それに何よりマスター・工藤の作る料理の美味しそうなこと!
しかも料理好きの人なら「ちょっとマネしてみようかな?」と思わずその気になってしまう感じで、
さりげなく調理のポイントが書いてあるのもニクイ。
こんなお店が会社の帰り道にあったらどんなにいいだろう…と思っているのは私だけではないはず。(断言)
でもいくらくらい持っていけば大丈夫なんでしょうか?
かなりいい食材を使っていそうなのでちょっと不安^^;
ただ、全体的には柔らかい雰囲気でシットリと書いてあるので面白く読めてしまうけど、
実はどの作品の謎も構成が複雑でちょっとくどい印象もあったり。
なので一つの作品として「これは!」と言うのがなかったのは残念。
謎解きよりも、雰囲気を楽しむ作品なのかな。
その中で「約束」は印象的。
人間のエゴ剥き出しのイヤな話で物語的には好きじゃないんだけど、
目の前で起こっていることについては工藤によって解決されるものの、それに付随する様々な事柄は「そういうこともあったかもしれない」
と提示するだけで「でもそれは別の話」として追求することはせずに終わっている。
もしかしたらこういうのって人によって好き嫌いが別れるのかも知れないけど、私は余韻があって巧い構成だと思う。
でも、この作品、以前「香菜里屋」
の常連だった男が故郷の岩手に帰って始めた小料理屋を休みを取った工藤が訪ねていったら忙しかったのでたまたま店を手伝った日に…
という展開での話なんだけど、本来のストーリーよりも私が気になったのが「そんな始めたばっかりの小料理屋で、
急にみんなが感心するような料理が出てきたら、その時はいいかも知れないけど後が大変なんじゃないの~?」ってこと。
だって「この間のアレ、美味しかったからまた作ってよ」って言われても困るでしょ?
と、余計なことを心配しつつも…。
新しいキャラクターとして工藤と浅からぬ因縁がありそうな池尻大橋のバーマン 香月が登場するなどまだまだ新たな展開の予感。
第三弾「螢坂」も楽しみ。
また図書館に予約しようっと。
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