映画:「春の雪」
先週末に観に行こうかな~、どうしようかな~と思いつつウダウダして結局行かなかったのに、今日になったら急に「やっぱり行こう!」
と思って会社帰りに映画館へ。
「あ、明日は1日で映画の日だから1,000円で観られたじゃん!」と気が付いたのはチケットを買ってから。
クヤシイ…(泣)
で、感想ですが。
私にとっては全体的に「残念」な映画だった。
最初にキャストを聞いたときに感じた違和感がどうしても拭えなくて期待しないで行ったんだけど、残念ながらそれが覆ることはなかった。
確かに衣装とかお庭とか馬車とかすごく豪華で美しいんだけど、なんだかすご~く表面的な感じ。
あの原作の文章の中に込められていた暗く輝く綺羅綺羅しさがほとんど感じられなかった。
出てくるエピソード自体は原作にかなり忠実なんだけど、どれも点描みたいな感じで繋がりが判らないんだよね。
特に(まあ時間的に処理するのが難しいとは思うけど)人間関係が非常に単純化されて描かれていたのが、私はとても不満だったなあ。
松枝家と綾倉家の微妙な力関係とか、主従の腹のさぐり合いとか私が原作を読んで面白いと感じた部分が殆どなくなっていた。
私は清顕と聡子の恋物語よりも、
そうした周囲でうごめく人々の方に興味があったのでその辺をバッサリカットされていたのはやっぱり残念だった。
それに清顕の気持もあれではなんだかよく判らない。
あの手紙を燃やすシーンなんか原作ではすごく激しい心の動きがあったはずなのに、かなり淡々と処理されちゃってるし。
そして何よりキャストが私のイメージとは全然違ったというのがやはり大きい。
とにかく、妻夫木くんはお金持ちのおぼっちゃんには見えません!
あのしっかりした造りの顔を見ていると、どうしても苦学生みたいに見えてしまうんだよね~^^;
清顕はもっとヘナチョコで、線が細くて、つまんないことで一人でウジウジ悩んだり迷ったり怒ったり拗ねたり、
かと思えばちょっとしたことで喜んだりしてる感じ。
私のイメージでは(前にも書いたけど)藤原竜也が一番近い。
妻夫木くんは悩むにしても「真っ直ぐ」悩むイメージで、ああいう思考をするタイプには見えないんだな。
間違っても「夢日記」なんか付けないでしょう。
どちらかというと彼は本多の方が似合っていたと思うなあ。
聡子は、見た目は思ったよりもキレイだった。
クッキリした眉毛や、黒目がちの深い瞳や、ふんわりした頬の線がお嬢さんっぽくてよかったし、額を出した髪型も似合っていた。
(その分、最後に髪を切ってザンバラになったところはただの小娘みたいでちょっと…。もう少しスタイルを考えてあげればいいのに…)
衣装も豪華で綺麗だったし。
(私はお芝居を観に行ったときのドレスが好きだったなあ♪)
でも、性格はもうちょっと跳ねっ返りな部分があってもよかったと思う。
あんな風に「清様、大好き」光線出しっ放しじゃなくて、年下の清顕をちょっとからかって翻弄するみたいな一面もあったと思うし、
その方が清顕がイマイチ聡子との恋に踏ん切りが付かない理由にもなると思う。
清顕との別れを決意する場面(松枝家に一人で来て「承知しました」って言うところ)の表情が凛としていて一番綺麗だったな。
本多くん役の人(誰?)もイマイチ…。
私は本多くんは清顕よりも気に入っているのだけど、その本多くんの良さが全く伝わってこない。
「どんなヤツなんだ、こいつ」って感じ。
何故清顕と本多が一緒にいるのかも判らないし、清顕にとって本多がどんな存在なのかも判らない。
(最後にちょっと見えてきたけど)
もうちょっと本多がどんな人物なのかを紹介するエピソードがあっても良かったのでは。
あと、清顕があんなに濡れてるんだから服を脱がせて拭いてあげたほうがいいと思う。
濡れた服の上から手ぬぐいで拭いてもあまり意味はない。
それから聡子のところに行くって行ったときも「その前に病院に行け」と言ってあげて欲しかった…というか、
あの家はあんなに使用人がいるのに何故誰も若様の病気に気付かないのだ!
綾倉の殿様も何だか普通の人になってしまっていて残念だったなあ。
原作では何があっても「誰かが何とかしてくれるだろう」と鷹揚に構えている(というか自分では何もしない)性格が好きだったんだけどな。
蓼科も原作ではあんなに扱いにくそうで怖い印象だったのに普通の侍女になっていたのも意外、というかつまらなかった。
見た目は怪しそうで期待してたんだけどなあ。
唯一、自殺を装って伯爵を驚かすシーンは良かった。
ああいう人を食ったような感じのシーンがもっと出ていたら良かったんじゃないかと思うんだけど。
シャムの王子たちもせっかく出すんだったらちゃんと最後まで面倒見てやれよ、と思う。
いつの間にかいなくなってるなんて…ヒドイ。
良かったのは清顕のお祖母様役の岸田今日子、清顕と聡子が密会する宿の主人役の石橋蓮司、それから松枝家の執事役の田口トモロヲ。
3人とも登場シーンは多くないけど、印象的だった。
あっ、清顕のお父さん役の榎木孝明も貴族っぽくてよかった。
でも、あのお父さんからあの息子は出来ないと思う(笑)
エンディングに流れる宇多田ヒカルの「BE MY LAST」も良かった。
それにしても、全然泣けなかったのには自分でも驚いた(笑)
(ドラマなんかエンディングだけでも泣いちゃうときがあるのに)
やっぱり「ロミジュリ」が苦手な私はこの手の話はダメなのかしら…。
原作は面白かったんだけどな~。
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春の雪 三島由紀夫の原作を、 『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督が映画化。妻夫木聡・竹内結子を主演に描く、大正時代が舞台の切ないラブストーリー。 この話題に関するクチコミを見る ![]() |
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コメント
はじめまして。
私も実は映画版の蓼科に疑問を持っていたので、書き込みさせていただきました。他所では絶賛しているところが多く、納得できなかったもので。
原作の蓼科ってはじめの方からもっと身分が低い者らしい、いやらしい雰囲気が出ていたと思います。なのに映画の蓼科はかなり上品な印象でがっかりしました。だから最後の自殺未遂のシーンも唐突に感じました。
あと理論派で秀才肌のはずの本多が思いっきりさわやかなスポーツマンタイプになっているのもちょっと肩透かしでした。
人気者の主演2人だけ叩いて、こうした脇の原作との違いに一言も触れない人たちって本当に原作読んでるのか怪しい気がします。脇って言っても本多も蓼科ももともと影の主役的な存在ですしね。
原作との比較をやめて別の映画として見れば、私的には結構満足でした。わざとらしい波を起こさず淡々と描く映画も結構いいものだと思います。
投稿: murata | 2005/11/10 14:35
■murataさん
こんばんは。コメントありがとうござました。
確かに蓼科は原作のイメージより随分忠義者に描かれていましたよね。
本多も(演じた役者さんには申し訳ないですが)頭良さそうには見えませんでしたし。
映画のあの長さの中にストーリーを入れるにはあのくらい判りやすくしないとダメだったということでしょうか。
投稿: tako | 2005/11/10 20:53
突然で申しわけありません。現在2005年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。トラックバックさせていただきましたので、投票に御参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://forum.nifty.com/fjmovie/nma/です。
投稿: 日本インターネット映画大賞 in ブログ | 2005/12/26 07:27