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2005/12/30

富樫倫太郎/妖説 源氏物語〈参〉

妖説 源氏物語〈3〉
富樫 倫太郎
富樫倫太郎/妖説 源氏物語〈参〉

出版社 / 著者からの内容紹介
本当の父親は光源氏ではなく、亡き柏木なのか。 苦悩する薫中将。そして、その疲れた心を癒すが如く現れた美しき姫・大君。心の迷路を彷徨う薫であったが、陰陽師白鴎の力を借り、 ついに冥界より召還された柏木と対面する。真実が明らかになり、静かにすべてを受け入れて、前に進もうと誓う薫。だが、 その背後には凶悪な魑魅魍魎が迫っていた。シリーズ完結篇。

「完結編」なので(「宇治十帖」の)最後まで書いてあるのかな、と思ったけどそんなことはなかった。
原典としたら匂宮が初瀬詣での帰りに宇治に立ち寄って、そこで八の宮の屋敷を訪ねる…あたりまで。
つまり、薫と匂宮の「恋の鞘当て」が始まる前まで、ということ。

これについて著者は「あとがき」のなかで

自分としては、薫と匂宮の友情を『妖説 源氏物語』の主題のひとつとして設定していたので、 その友情に女性関係でヒビが入る前に物語の幕を引こうと考えたのだが、その考えが甘いと言われれば返す言葉もない。

と書いている。

つまり、著者としてはここで終わることを最初から決めていた、ということ。
私にとっても原作の匂宮、薫、大君、中君そして浮舟をめぐる三角関係、四角関係のもつれというのは正直「邪魔くさいなあ」 って感じの展開なので、それを読まずにすんだのは気分的には楽だったかな。
それに薫と匂宮、そしてその遊び仲間たちの出てくる殆ど著者のオリジナル設定の物語はかなり面白く読めたんだけど、 ちょっと原典に沿った話が続くと(例えばこの巻だと「橋姫」のあたり) 物語のスピード感が急速に失われてとてもつまらないお話しにしか思えなかったというのもある。

そして薫と匂宮の友情!
あの2人の関係にそんな感情があったなんて原作(現代訳)を読んだときには感じなかったけど、確かに言われてみれば叔父・ 甥とはいえ1歳違いで、小さい頃からすぐ近くで幼なじみのように、兄弟のように育った若い2人なんだから、 そうした感情が生まれるのは普通に考えれば当然の話。
で、その関係が想像できれば、この物語のようにどこに行くにも連んで出掛けて行く2人や、匂宮がどこかで困ったことになっていると、 それを聞きつけた薫が仕方ないな~という表情で出掛けていく姿なども思い浮かべることが出来る。
この2人の関係は原作の中では宇治の姫君たちを間に挟んでのあまりお上品とは思えない争いばかりが書いてあるけど、 それより前はこんなに仲がいい2人だったのだということに思いを致すことはとても意味深いことだと思う。
この2人の友情が前提にあるからこそ大君という女性に出会って初めて人を愛することを知った薫の悩み、彼女を失ったあとの哀しみ、 そしてその想いが匂宮に愛された中君を慕う心に繋がり、やがて浮舟への愛に転化される…しかし、それは報われることなく静かな最後を迎える… という原作のストーリーが生きてくる。

著者は敢えてその後を描かなかったけれど、原作には書かれていない重要なことを提示してくれた意味は大きい。

ただ、物語のラスト、 薫からも匂宮からも言い寄られてどうしていいか判らずパニックに陥り宇治川に飛び込んだまま行方知れずになった浮舟が、目が覚めた尼寺 (だっけ?)で「もうこんな煩わしい世の中まっぴらだわ」とサッサと出家してしまうエンディングはけっこう好き(笑)
なので、この部分を著者がどう描くかは読んでみたかった気もするな~。

それと、この物語で出色なのが、薫が実の父である柏木(の霊)と対面する場面。
女三の宮との浮気を嫉妬した源氏にいびり殺されてしまった(笑)柏木は原作ではその後顧みられることなく、 ただ薫が悶々と悩み続ける原因とだけなっているけど、この作品の中では陰陽師・ 白鴎の力によって死んだ柏木の霊が呼び出され薫と親子の対面をしているところが非常に印象的だった。
原作では母になった女三の宮のことも生まれてきた息子・薫のことも関係なくただ自分が死ぬことばかりに気を取られていて、 全くいいとこなしで退場してしまったイメージがあったけど、この作品で霊的な存在として息子と対面した柏木は薫を気遣い、 自分の浅慮によって不幸にさせてまった女三の宮を思い遣る気持ちに溢れた「いいお父さん」として登場している。
更には猿田大納言の陰謀により冥界に落とされてしまった薫を自分が身代わりになって救うなど、千年ぶりの名誉回復(笑) といった活躍振りだった。

まあ、全体的に舞台は借りているものの、全く別物といったイメージだったけど、 ただ単に原作を現代訳しただけでは気付かないいろんな意味や関係を教えてくれる部分も大きい作品だった。

あ、それから「あとがき」に書いてある著者の源氏観がかなり面白いので、ここだけでも読んでみるべし(笑)

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