山本一力/深川黄表紙掛取り帖
深川黄表紙掛取り帖
山本 一力
内容(「MARC」データベースより)
深川の薬売り蔵秀が日本橋の雑穀問屋から厄介事の解決を頼まれた。仲間と4人で各々の得意仕事を生かして行う裏仕事が始まった…。 元禄版請負人の連作短篇集。『小説現代』掲載。
面白かった。
とにかく上手い。
普通こういう「厄介事を解決」っていう話だと「必殺○○人」みたいな超法規的手段での解決物語なことが多いけど、
これは人を傷つけたり殺したりすることはもちろん、その手段全てを(少々ズルイ手は使うものの)
法律の範囲内で納めているところが却って新鮮。
しかもその方法がまたかなり凝っていて、それを成功させるための下準備の描写がすごく丁寧なのもいい。
(あまりにも手が込んでいて何をやってるのか時々判らなくなってしまうこともあったけど^^;)
一つ一つの物語が短篇として成立しているのと同時に、その結果が後に続く物語に受け継がれ全体で一つの長編のようにも読める構成。
よくある構成だけど、その繋ぎ方が上手いのでどの物語も興味深く読めたし、
その中で変化していく蔵秀を始めとした4人の仲間たちの関係も丁寧に描かれていて面白かった。
また脇役、特に蔵秀の父親の雄之助(「山師」だっていうから信用できない職業の人かと思ったら、本来的な意味での「山師」だった(笑) ) とか船宿の主人の善右衛門が味があって良かった。
ただ、その前の話まで蔵秀たちと遺恨が残ったままだった紀文と仲が、
ある登場人物の出現で急に上手くまとまって大団円になる最後の部分がちょっと唐突な印象。
確かにその人物は非常に魅力的に描かれていたので「その人物が認めるなら…」と紀文が考えたのかもしれないけど、
その辺が上手く伝わって来なかった感じ。
もしかしたら、実は紀文の中には蔵秀に対するこだわりが残っていて、この後も「つづく」ってことなのかも。
それも楽しみだな。
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