近藤史恵/桜姫
桜姫
近藤 史恵
内容(「MARC」データベースより)
歌舞伎役者の跡取として期待されていた兄・音也を絞め殺す夢に苦しめられる妹・笙子。成長した笙子の前に、 音也の親友だったという若手歌舞伎役者・市川銀京が現れるが…。書き下ろし歌舞伎ミステリ。
養成所出身の大部屋歌舞伎役者・瀬川小菊と彼の大学時代の友人で探偵の今泉文吾が梨園で起こる事件の謎を解くシリーズ第3弾。
ミステリーなのかな、これって。
確かに「謎」は存在するし、死体が出てきたり、最後には謎解きもあるからミステリーの形はしているのかもしれないけど…
その全体的な姿は私にはどちらかというとラブストーリーに近い感じがした。
誰かが誰かを捜している物語。
誰かが誰かを見つける物語。
その捜す過程からはラストが全く想像出来なかったので、回答が出た(見つかった)ときはビックリした。
近藤史恵さんってこんな風に引っ張って引っ張ってラストに意外な展開を準備しておいてくれる物語が上手いと思う。
ただ、この内容だと今泉の立場はどうなるの?って感じがしちゃうけど(笑)
「いつになったら出てくるの?」と思ってたら、殆ど活躍するスペースもなくただ結果を報告する人だったので驚いてしまった。
それから、芝居小屋の中で死んでいた彼とその周囲の人たちの部分と、本筋の物語との関係性もなんとなくよく判らなかった。
何故あの事件がこの物語の中にあったんだろう。
それよりも何よりも、主役の一人である銀京が一番不思議。
彼の意図とか性格が最後まで把握出来なくてずっと据わりが悪かった。
まあ「いい人」か「悪い人」かハッキリしろというのも乱暴な話ではあるけど、でも物語の中で笙子が「何故?」
と思う以上に読者には銀京の心の内が見えないわけだから、もうちょっと彼の行動の意味が判るように書いてある部分が欲しかったかな。
でも物語全体に漂う少々陰鬱な雰囲気が私はけっこう好きだったし、謎(秘密)が明かされた後その鍵によって全ての疑問がスルスルと解けていくさまが心地よかった。
だから、最初からある特定の人物が探偵役として出てくる(であろう)ミステリーとかっていう思い込みがなく読めた方が単純に面白いと思えたかも。
ところで、この作品のタイトルは何故『桜姫』なんだろうと読んでいる間ずっと疑問だった。
確かに、銀京や小菊たちが「勉強会」の名目でやる舞台の演目が「桜姫」ではあるんだけど、それだけじゃないはず。
実は「桜姫東文章」は私が一番好きな歌舞伎作品。
(知ってる作品数自体、たいした数じゃないけど)
あまりにも奇想天外、波瀾万丈な物語で最近のドラマなんて目じゃないよ、って感じ。
(詳しいストーリーは「じゃわ's じゃんくしょん」さん内のこちらのページを参照してみて下さい)
これを見ると「南北ってすごい戯作者だなあ」と思うと同時に、こんな芝居を上演することを許していた200年前の日本ってのもスゴイと思う。
で、そのスゴイ歌舞伎作品のタイトル(というかタイトルロールのお姫様の名前)が何故この物語に付いているのか判らないまま読み終わったんだけど、そのあとふと「桜姫は生まれ変わりだ」ということを思い出した。
…!
なるほど…。
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