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2005/12/03

浅田次郎/沙高樓綺譚

沙高樓綺譚
浅田 次郎
浅田次郎/沙高樓綺譚

内容(「MARC」データベースより)
各界の名士たちが集う「沙高楼」。世の高みに登りつめた人々が、ミステリアスな女装の主人に誘われ、秘密を披露しあう。 稀代のストーリーテラーによる息を呑む驚愕の物語。

浅田次郎の作品は決して嫌いではないどころか、かなり好き、なのだけれど、本屋で新刊(文庫) を見かけてもその場でパッと手が伸びる場合と、しばらく考えて「う~ん…やっぱりいいや」と保留にしてしまう場合がハッキリ別れる。

敬遠してしまうのは「壬生義士伝」のような長編の感動もの(読むのに体力・気力が必要そうなのでなかなか思い切れない)とか、 現代物のちょっと切ない系短篇集(巧すぎる文章で書かれるリアルな切なさがちょっと苦手)など。
反対に大好きなのは「天切り松」シリーズとか、「きんぴか」などの、 掛け値なしに切ないけど舞台が自分のいる場所とは離れているから多少落ち着いて読める、とか「こんなことあるわけないよ」 な荒唐無稽な設定の中で大笑いさせたあとにホロッとくる作品。
そんなふうにちょっと作品との距離感があってしかも短い作品でないと、あまりの文章の巧さに引きずられてしまいとても気疲れしてしまうのだ。

そんな私にとってこの「沙高樓綺譚」は久々に出会った「出たらすぐ読みたい」浅田作品だった。

今は引退した刀剣の鑑定士が、その世界の宗家を継いだ昔なじみと偶然出会うことから始まる。
宗家は彼をある高層マンションの最上階に案内する。
そこに掲げられた扁額の名は『沙高樓』。
現実離れした空間に集まっているのはいずれも様子のいい紳士・淑女ばかり。
何が始まるのか知らされていない元鑑定士の前に現れたオーナーは派手なドレスに身を包んだ大柄の婦人-いや、それは紛れもなく男性であった。
彼(女)の一言でその夜の宴の幕が切って落とされる。
「沙高樓へようこそ-」

その秘密のサロンに集まった5人によって語られるそれぞれの物語の広がり、深み、不思議さ、美しさ、危うさ…。
人間の心に潜む深い闇を描いた心理描写ももちろんだけれど、 彼らの職業に対する深い知識と理解に基づくさりげない描写がその物語に力を与えていた。

巧いと思うのは、この物語をいきなり「沙高樓」からではなく、そこには全く関係のない一人の男の視線から始めていること。
彼が戸惑いながらゲストとしてその場違いな場所に身を置き、現実離れした不思議な物語に耳を傾ける。
その彼の目を通して私たちは沙高樓を見、彼の耳を通して5つの物語を聞く。
彼こそが私たち読者の視点であり、彼の感じる戸惑い、怯え、苛立ち、疑問、理解などの感情はそのまま私たちがそこに感じるものなのだ。

ただ5人の物語を聞く(読む)だけでも充分楽しめるけど、実際に自分もあの現実離れした「沙高樓」 という空間に一緒にいるような気分にさせてくれるこのちょっとした設定がとても効果的だった。

お話しになられる方は、誇張や飾りを申されますな。お聞きになった方は、夢にも他言なさいますな。あるべきようを語り、 巌のように胸に蔵うことが、この会合の掟なのです-

沙高楼綺譚 草原からの使者
浅田 次郎
浅田次郎/沙高楼綺譚 草原からの使者続編も出ているみたいなので早速図書館でチェックだ!

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コメント

私のブログへのコメントありがとうございました。いやあ、嬉しかったです。がんばってカスタマイズしてみますです。
ところで「MARC」って私には懐かしい言葉です。というのは私、昔図書館で働いていたので、よく聞いた言葉だったのです。
ついでに、鉄道マニアの私にとっては、浅田次郎は「鉄道員」の人、というイメージが強いです。本職の鉄道員もみなあの映画で泣いたそうですから。

投稿: くうみん | 2005/12/04 00:28

■くうみんさん
こんにちは。コメントありがとうございます。

そちらへのコメントの件、喜んで頂けて私も嬉しいです。
カスタマイズは最初の一歩をどこに置いたらいいのかがなかなか判らないのが初心者には不安ですが、コツを掴んでしまえばある程度のことは同じ要領で出来ると思います。
(私も基本をよく理解しないままよそ様のを真似させて頂いているだけなのであまり大きなことは言えないのですが^^;)
自分のブログが思ったように変わっていくのを見るのは楽しいですよね。
体調やお仕事、生活に支障が出ない程度に頑張って下さい(笑)

浅田次郎は本当に物語を書くのが巧いですよね~。
今までに何度泣かされたか…。
うっかりしてると通勤電車の中でも泣かされるので注意が必要です^^;

投稿: tako | 2005/12/04 01:02

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