北森鴻/写楽・考-連丈那智フィールドファイル〈3〉
写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉
北森 鴻
異端の民俗学者・連丈那智シリーズ第3弾。
表題作ほか「憑代忌(よりしろき)」、「湖底祀(みなそこのまつり)」、「棄神祭(きじんさい)」の4編を収録。
ページ数の関係だと思うけど(約40~50ページ)、最初の2作(「憑代忌」、「湖底祀」)
がかなりアッサリと終わってしまうのにはちょっと意表をつかれてしまった。
状況説明が終わってさあ謎解きだ、と思ったら、いきなり登場した那智によってあっという間に解決…。
那智先生、万能過ぎます(笑)
3編目の「棄神祭」はもうちょっと長め。
物語の構成自体は面白かったけど、最初のほうでさんざん「那智が昔出会った事件にケリを付ける」
みたいなことを言ってたわりには最後までその設定が持続していなかったように思うのだけど…。
いつものように「依頼を受けてフィールドワークしにいく」設定とどう変化がつけたかったのかが今ひとつ判らなかった。
で、表題作の「写楽・考」。
これはさすがにページ数も充分、三國や新しい助手の由美子はもちろん、那智もそして教務部の狐目の担当者氏までほぼ全編で活躍する力作。
残されたヒントから「ピンホールカメラ」「フェルメール」を導き出して、その結論を「写楽」に持ってくるあたりの論理の組み立ては
「なるほど~」の連続で、とても面白く読めた。
別シリーズで活躍している冬狐堂の宇佐見陶子まで重要な役割で出てきているので、ファンならかなり楽しめるのでは。
(あ、あと場所としてバー「香月」も出てきたかな)
この作品を読んでいて「おっ」と思ったのは、例の狐目氏の名前がついに明かされた(付けられた?)こと。
この本の他の作品でも彼は出てきているけど、そこでは三國が彼を呼ぶときは「……さん!」みたいなすご~く違和感のある表現になっている。
それが「写楽・考」ではちゃんと名字が出てきているのだ。
(まあ、別に普通の名前だけどね(笑))
確かにあれだけ物語に絡んでいて「……さん」じゃああまりにも不自然すぎるとは思う。
でもだったら今までは不自然じゃなかったかというとそうではないわけで、
最初の頃のように教務部でイヤミだけ言ってる立場の人だったらともかく前作で「那智と学生時代からの知り合いだった」
と判った時点で名前を出すべきだったんじゃないかと思うんだけどなあ。
これで晴れて名前を与えられた狐目氏(名前は各自ご確認下さい(笑))は今後も重要な役割で登場するってことなのかな。
それはとても楽しみ。
で、いつもと同じ感想なのは三國くん。
ハッキリ言って(門外漢の私ですが^^;)民俗学者の素質ないのでは?と思ってしまうくらいの相変わらずのグダグダさ…。
那智と三國の会話とか読んでるとホントイライラして来ちゃう。
いくら三國の直感力が優れているっていったって、今のままでは那智がなんでいつまでも三國を傍に置いておくのかが理解できない。
今回なんて入ったばかりの助手・由美子にまでかなりやり込められていたし…何年助手をやってるんだって。
(由美子の存在のおかげで、話の進み方が速くなってイライラが軽減した部分あり。もしかして著者も三國を持てあましているのか?^^;)
もうちょっとしっかりして欲しいなあ。
<このシリーズの他作品の感想もよろしかったらどうぞ>
■
『凶笑面- 連丈那智フィールドファイル〈1〉』
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