斉藤直隆/空想刑事読本
空想刑事読本
斉藤 直隆
『太陽にほえろ!』や『古畑任三郎』、『あぶない刑事』、『踊る大走査線』、果ては
『西部警察』 まで。
ドラマの中で繰り返し描かれる刑事ドラマに登場する刑事たちを<空想刑事>と名付け、その設定と実際の警察の制度・
法律を照らし合わせてその存在を「社会科学的なアプローチで解明する」という主旨の一冊。
面白かった!かなり楽しめました。
誰もが知っている刑事ドラマのスター(?)刑事たちの一人一人を俎上に上げて、
設定の無理や矛盾点をバッサバッサと斬っていくその切れ味が心地いい。
例えば「交渉人・真下警視の前途は極めて多難」、「七曲署は呪われている」、「西部署の車は、メーカーからの寄付だった!」、
「古畑任三郎の手法では公判は維持できない」…などなど(笑)
特に私は「ボスは昇任試験に毎年落ちていた!?」話とか「十津川警部の出張」の話辺りが面白かったなあ。
そしてこの本がスゴイのは単なる「揚げ足取り」には終わっていないこと。
きちんと現状の警察組織、制度、法での制限をかなり詳細に下敷きとして書いた上で冷静に比較・検討してあるので論に説得力がある。
また著者の論調も「だからドラマの刑事はダメなんだ」という否定ではなく、
「現実と空想のギャップを知ることで広がる面白さを知ってもらいたい」
という肯定の上に立脚しているので読んでいてイヤな気分になることもない。
更に「現実」vs「空想」の対比を楽しめるだけでなく、私のような一般市民にはかなり判りにくい警察の制度(特に組織図とか役職とか)
が簡潔に書いてあるのも興味深かった。
例えば「巡査」と「警部補」って随分離れてるように思えるけど(だって「警部補」って名前随分偉そうじゃない?)、実は間に「巡査部長」
が入るだけなんだ、とか。
(と言っても「巡査部長」への昇任試験が競争率的には一番の難関らしいけど)
それからキャリアとノンキャリアではそのスタートラインから大きく違ってくるっていうのも詳しく書いてあって面白い。
ノンキャリアは一番下の「巡査」からのスタートになるのに対し、二種準キャリアが一階級上の「巡査部長」から、
一種キャリアになると二階級も上の 「警部補」からのスタートになるらしい。
キャリアとノンキャリアの対立は最近はドラマでもよく聞くようになったけど、確かにスタート時点でこんなに差がついていて、
それをひっくり返すのは一生かかっても殆ど難しいような制度の中で仕事している(しかも絶対的な縦社会)
となればそりゃあ相容れないものがあるのも当然かも…。
どんな学歴だって(多少お給料に差があるにしても)みんな「新入社員」
から始まるのが当たり前の普通の会社員からしたらちょっと想像できない組織だなあ。
こんな感じで「空想」の中だけでなく、「現実」
に私たちの社会の安全を守ってくれている警察組織への理解を多少なりとも助けてくれる内容になっている。
またその「現実」を踏まえながら、「空想」の刑事たちを違った角度から自分なりに見直してみるのもいいかも。
(そう言えば先日の『古畑任三郎Fainal』で、今泉が「45歳なのに巡査」とか「もう警視総監にはなれそうにない」
って言ってたのはかなりウケた(笑)それは3回くらい生まれ変わらないと無理かも…^^;)
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