高橋克彦/おこう紅絵暦
おこう紅絵暦
高橋 克彦
内容(「BOOK」データベースより)
幼い花売り娘が人殺しの咎で奉行所に捕えられた。娘はなぜ口を閉ざすのか(「願い鈴」)。 北町奉行所筆頭与力の妻にして元柳橋芸者のおこうが、嫁に優しい舅の左門と力をあわせ、江戸の巷を騒がせる難事件に挑む。 巧みなプロットと心あたたまる読後感は、まさに捕物帖の真骨頂。大好評『だましゑ歌麿』の姉妹篇。
『だましゑ歌麿』で事件を解決する仙波一之進を影ながら支え、解決への手助けをしたきっぷがよく美人の柳橋芸者のおこう。
彼女が今作では晴れて一之進と夫婦になり、前作の活躍で北町奉行所吟味方筆頭与力に出世し格式も高くなった仙波家の若奥様として登場。
足腰が弱くなり外出はままならないが、意気はますます盛んでさばけた舅左門とともに身近で起きる事件を解決していく短篇連作。
「願い鈴」「神懸かり」「猫清」「ばくれん」「迷い道」「人喰い」「退屈連」「熊娘」「片腕」「耳打ち」「一人心中」「古傷」
の12編を収録。
面白かった。
長編だった前作『だましゑ歌麿』とは打って変わって今回はどれも30ページ前後の短篇。
なので前作のような物語が進むごとに二転三転する状況の意外さに驚くといった楽しみは少ないけど、
その分性格設定がハッキリした個性的なキャラクターと緻密だけど分かり易い筋立て、巧みに引かれた伏線から導かれる意外な真実など、
どの作品もピリリとした味わいがあって楽しく読んだ。
もちろん「そんな身近でばっかり事件が起こるわけないんじゃ…」とか「おこう、勘が良すぎ!」
とかツッコミどころがないわけではないけれど、この毎回同じようにまとまるパターン(例えば「水戸黄門」のように)
もまた短篇時代ミステリーの醍醐味なのかなあ、と。
しかもその短い紙数の間にも、おこうと左門、一之進、春朗(のちの北斎)らの心温まる交流があったり、
おこうの昔の姿が少しずつ見えてくる物語が隠されていたり、前の物語で出てきた人物がそのまま友人、知人として後の作品にも登場したりと、
単に「謎解き」だけでなく、そこにある「生活」もまたさりげなく読ませてくれる描写力、構成力はさすが。
前作を知らなくても充分楽しめる作品になっていると思う。
このシリーズもゆっくりでいいから長く続けてくれるといいなあ。
この後、登場人物の一人、春朗を主役にした『春朗合わせ鏡』が出ているようなので早速図書館に予約中。
読むのが楽しみ~♪
だましゑ歌麿 高橋 克彦 |
春朗合わせ鏡 高橋 克彦 ![]() |
<前作の感想ももしよかったらどうぞ>
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『だましゑ歌麿』
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