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2006/05/27

辻原登/花はさくら木

花はさくら木
辻原 登
4022501790

内容(「MARC」データベースより)
江戸時代中期・宝暦11年。京・大坂を舞台に、即位前の智子内親王(後桜町天皇)、権謀術数の田沼意次が活躍する。人・歴史・ 地理があやなす華麗な恋と冒険の時代小説。『朝日新聞』連載を単行本化。

著者の辻原氏の作品は 『遊動亭円木』しか読んだことないけど、それがすごく面白かった(というか私好みだった)し、 あらすじにあるように後の女帝を題材にした歴史小説という設定も面白そうだった。
しかも図書館に予約してから随分待たされたし、 私の後もまだかなり予約の順番待ちがいるらしい人気作のようだったので楽しみにしていたんだけど…残念ながら今ひとつだった。

決して退屈だったりつまらなかったりしたわけではないんだけど、 あまりにも話が膨らみすぎてしまったため全体像が非常に曖昧になってしまい、けっこう長編なのに読み終わったあとに「終わった~!」 っていう達成感がなかった。

物語は即位前の智子内親王(後桜町天皇)と朝廷の話、幕府の要・田沼意次と大阪豪商との駆け引き、 大阪の水運を取り仕切る北風組の娘として育てられた美女・菊姫の出生の秘密や、彼女と田沼の有能な部下・ 青井三保の恋の行方などなど様々な要素が絡み合って進んでいくんだけど、 話が進むにつれていろんな要素が入り組みすぎてだんだん焦点がぼやけてきてしまった感じ。
冒頭の智子内親王と菊姫が御所の庭の堀割を舟で登場するシーンや、 青井が密命を運ぶ闇飛脚を急襲しその通信文の不思議な内容が明かされるあたりはすごく印象的で面白くなりそうな気配が濃厚だったんだけど。

特に最初は二人並んで登場した智子と菊姫だけど、 だんだん菊姫のほうの比重が大きくなって智子の印象が薄くなっていってしまったのは期待はずれだったなあ。
どちらかというと私はこののち女帝として生きることになる若く美しく聡明な内親王がその前夜何を考えていたのかについてもっと言及してくれるのを楽しみにしていたので。
しかも、そうやって智子を脇に押しのけてまで描いていった田沼側と北風組の対決の結末もなんだかあっけなかったし…。

登場人物はそれぞれ魅力的だし(特に田沼意次の設定はカッコよかった!)、エピソードも印象的なものが多かったんだけど、 それぞれバラバラに点在している感じで散漫な印象になってしまったのが残念。
「恋」の話と「政治」の話二本立てで行くよりも、 どちらか片方にもっと重点を置いてその中のエピソードとしてもう片方を扱ったほうがよかったのでは。

あと、会話の部分、それぞれの立場ごとにもう少し言葉遣いに変化をつけた方がよかったと思う。
例えば御所の中の人は御所言葉を使うとか。
平易な会話文で読みやすかったけど、その分立場や身分の違いみたいなものの表現も平坦になってしまった部分あるんじゃないかな。


<もしよかったら他の作品の感想もどうぞ>
『遊動亭円木』

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コメント

これ、新聞連載中に少し読んだのですが、続きませんでした。一気に読まないと、その時点での話はわかっても、以前のことと結びつかないのですね。

で、これに限らず 連載ものの長編って、作者が単行本化するときに手を入れると思うのですが、その際もっとスッキリと切りつめてくれないものかと、よく思います。

投稿: | 2006/05/28 09:47

■涼さん
こんにちは。コメントありがとうございます。

>一気に読まないと、その時点での話はわかっても、以前のことと結びつかない

私はかなり一気に読んだのですが、それでも話が広がりすぎていてだんだん判らなくなってきてしまいました^^;
ちょっと詰め込みすぎって感想です。
以前読んだ『遊動亭円木』は逆に物語の中の<余白>の部分が印象的な作品だったので、そのギャップにガッカリしちゃった部分もあるのかも…。

投稿: tako | 2006/05/28 10:04

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