浅田次郎/五郎治殿御始末
五郎治殿御始末
浅田 次郎
内容(「BOOK」データベースより)
男の始末とは、そういうものでなければならぬ。決して逃げず、後戻りもせず、能う限りの最善の方法で、すべての始末をつけねばならぬ。 幕末維新の激動期、自らの誇りをかけ、千年続いた武士の時代の幕を引いた、侍たちの物語。表題作ほか全六篇。
う~、泣いた^^;
私の「泣きますボタン」は押されっ放しでした。
幸か不幸か、読んだ場所が殆ど会社か電車の中だったのでさすがに号泣ってほどなかったけど、
そんな場所でさえ物語のクライマックスでは思わず涙がポロポロ出てしまったくらい。
相変わらず巧いです。
新選組好きなので幕末ものの時代小説はけっこうよく読んでいたけど、考えてみるとその次の時代「明治」
の物語って殆ど読んだことがなかった。
で、他の殆どの時代がそうであったように「江戸」(というか「慶応」)から「明治」
への変化というのも単に元号が変わっただけかと思っていた。
でも、これを読んでこの時代の変化、いわゆる「明治維新」というのは本当にその通り名が示す通り「すべてのことが改められて、
すっかり新しくなること。」であったのだということが理解できた。
自分の拠り所であった「身分」というものがなくなり、家がなくなり、仕事がなくなり、それどころか暦や時間まで、自分が今まで「当然」
と思っていたものが全て何の前触れもなく変わっていってしまう、そんな時代。
確かにいきなり「今年の大晦日は12月2日です」って言われたらビックリするよね~^^;
要するに「太陰暦」から「太陽暦」への変更なんだけど、こういうことが何の事前説明もなく即時導入されてしまうとしたらそりゃあ混乱するわ。
「明治」という時代は、過去の日本が積み重ねてきた歴史や習慣の多くを捨てて新しい制度を受け入れた、
今までの日本の歴史の中でも一番の激動の時代だったんだ。
そんな中で、過去となった「武士の時代」から抜け出せないまま不器用に、しかし誇り高く生きる男たちの物語。
こういう物語に「美しさ」を感じられる心こそが日本人の美質なんじゃないのかな。
「国家の品格」で藤原氏が「取り戻すべき」とした「武士道」の具体的な例がこういう物語なのではないかと。
特別付録として『御一新前後 江戸東京鳥瞰絵図』付き。
各作品の関連地名へのインデックスも付いているスグレモノ。
この心配りがニクイ。
表題作の他、「椿村まで」「箱館証文」「西を向く侍」「遠い砲音」「石榴坂の仇討」の計6編を収録。
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コメント
私も読みました。
明治維新の前後の世の中の感じが伝わってきて、興味深かったですね。
投稿: 本のソムリエ | 2009/05/24 15:34
■本のソムリエさん
こんにちは。
大混乱の様子をユーモアを交えて、それでいて心に迫る物語として描けるのは浅田さんならではですよね。
コメントありがとうございました。
投稿: tako | 2009/06/04 06:57