ダン・ブラウン/ダ・ヴィンチ・コード〈上・中・下〉
内容(「BOOK」データベースより)
ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ ヴィンチの最も有名な素描 “ウィトルウィウス的人体図”を模した形で横たわっていた。殺害当夜、 館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、 警察より捜査協力を求められる。 現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、 一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く…。
読み終わった~っ!
もう、とにかく「読み終わったこと」が嬉しい(笑)
最初にこの本を開いたのはまだ文庫化される前。
会社の後輩にハードカバーを借りてきて読み始めたんだけど何故だかなかなか読み進めなくて
「ルーブルのトイレで2人が逃げ出す相談をしている」辺りで止まったままにしていたら、
そのうちその所有者が会社を辞めることになってしまいそのまま返却。
で、それから1年。
自分で買う気はなかったんだけど会社で回し読みされていた文庫版が一通り回ったらしく社内文庫
(みんな読み終わった本を適当に突っ込んでおくスペースがあるのだ(笑))に揃っていたので借りてみた。
で、読み始めてはみたもののやっぱり最初のほうはなかなかペースが掴めなくて、前回と同じところまで辿り着くのに1ヶ月がかり
(この間に他の本を5冊くらい読んだ(笑))。
「また途中で挫折かな~」と思っていたけど、無事にルーブルを抜け出してからは一気にスピードアップして中・下巻はそれぞれ1日で読了。
なんなんだ、この差は(笑)
で、感想。
確かに面白かった。
最初のほうはちょっとモタつく感じがするけど(笑)、その後はスピーディーで、
それぞれに盛り上がりがある場面切り替えで飽きることなく読むことが出来た。
登場人物も個性的で、それぞれ役割が明確だし、物語を牽引する「謎」もなかなか興味深かった。
ただ、同時に「思ったほどでも…」と思ってしまったのも正直なところ。
読み終わるまでにあまりにも長くかかってしまったので自分の中の期待値のハードルを自分で上げてしまっていたのかな。
また「世界的なベストセラー」という称号にも期待しすぎてしまった感あり。
更には読まないでいる間にこの本からヒントを得たのであろうと思われるTV番組をけっこうたくさん見てしまっていて内容(特にダ・
ヴィンチの絵に隠された「謎」の辺り)について事前に知っていたことが多かったのがかなり大きいかも。
ただ本の中ではこうした「ダ・ヴィンチ関連の謎」がかなりサラッと流されていたのは、ちょっと意外な感じがしたな。
私はそれこそがこの本のメインなのかと思っていたので。
あと、何より致命的だと思うのは、やはり「キリスト教の教義や歴史、戒律、禁忌についての素養がない」ということ。
これが判らないってことは、この本の面白さ、意外性の本質は理解できないってことなのでは。
解説で荒俣宏氏は「そういう人のほうが楽しめる」と書いているけど、やっぱり何も知らないままこれを読んでも単なる謎解き、
暗号解読のミステリーとしてしか読めないんじゃないのかな。
何が出てきても、どんな解説をされても「ふ~ん。ま、そんなこともあるよね」としか感じられないんだもの。
確かに、何があっても「そんなことあるはずない!」的な拒否反応がないってことは言えるかもしれないけど…それと「面白く読めるかどうか」
はちょっと別だよね?
だから、この本が欧米諸国はともかく、キリスト教どころか「宗教」
というものに対して意識が希薄な日本でこんなに読まれているってことが不思議。
みんな判ってるのかな?
でも、日本人ってキリスト教的なことはともかく、「ダ・ヴィンチ」が好き、というのはあるかも。
「モナ・リザ」が初めて日本に来たときもビックリするくらい行列が出来ていたみたいだし。
つまり、この本が日本で成功したのは内容よりもそのタイトルがポイントだったのでは。
同じ内容でも「イエスのなんたら」とか「聖杯がどうした」
とかっていうようなタイトルだったら日本ではそんなに注目されなかったんじゃないかと。
タイトルが「ダ・ヴィンチ・コード」だったからこそこの本は日本でも売れたんじゃないかなあ、なんて思ってみたのであった。
物語的には暗号解読の根拠が今ひとつ曖昧な部分があったのと、最後真犯人以外はみんな妙に「いい人」
になってしまったのがちょっと物足りなかったな。
それから、あのショッキングな始まり方から考えると、最後はかなり尻つぼみになってしまった気がする。
もっとグチャグチャでドロドロか、または吃驚仰天なエンディングかと思っていたので。
越前敏弥氏の訳は判りやすくて、テンポがよくて読みやすかった。
巻末に越前氏推薦の参考文書の掲載あり。(親切!)
ちょっと面白そうなタイトルもいくつかあったので、図書館でチェックしてみよう。
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コメント
こんにちは。
私もキリスト教の知識なしでしたので、謎解きとして楽しみました。
宗教的な対立や、身分の差が犯行動機な洋書んかと同じで、
自分にとってリアルに感じられるものではないけれど、
小説の要素としてキリスト教に関する話題を読みました。
逆に「キリスト教の人ってこれを平気で読めるのかしら?
よく海外でベストセラーになったなぁ」と思いました。
美術品・建築物・キリスト教に関する蘊蓄があれだけ盛り込まれていながら、
ペダントリーにならずに読者に読ませてしまう筆力
(もしかしたら翻訳力も?)はすごいなと思いました。
投稿: KOROPPY | 2006/07/28 08:23
ブログに書こうとしたらちょうどtakoさんも同じトピックだったのでびっくり。
ハリウッドの娯楽映画さながらに読むのがこの手の読み物を楽しむコツなのでしょうか。
投稿: みつ | 2006/07/28 14:42
■KORROPYさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
どんなことでもそうですが「知識があるかないか」で面白さのレベルが変わってしまうことって多いですよね。
この作品ももちろん知識があるほうが楽しめるのでしょうが、そうでなくても読みながら「発見」や「理解」を促して楽しめるように作ってあるところがヒットの要因なのかも知れませんね。
それと、日本版では有能な翻訳者との出会いも重要なポイント。
翻訳家って語学の才能はもちろんですが、文学的才能も作家と同程度求められる難しい仕事だと思います。
(その割に報われていないのでは…とちょっと不安ですね)
この日本版は越前氏の翻訳が強力な助っ人になってますよね。
いくら原作がよくても翻訳がグダグダだと読めませんもんね~^^;
で、同時に越前氏にとってもこの仕事は大きなステップアップになったんでしょうね。
これからもどんどん活躍して行って欲しいです。
投稿: tako | 2006/07/29 09:08
■みつさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
お互い「遅ればせながら…」チームですね(笑)
「2つめのクリプテックスの答え」は私も途中で「もしかして?」と思ってました。
だって「あの人」って言ったら、「それ」ですもんね(笑)
でも1つめはあんなに複雑だったんだから、2つめがそんなに単純なはずはない…と思っていたら…^^;
これは「裏をかかれた」ってことですか?(笑)
ラストはもう一波乱欲しかったですね~。
こちらからもトラックバックさせていただきました。
投稿: tako | 2006/07/29 09:55