田中啓文/ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺
ハナシがちがう!―笑酔亭梅寿謎解噺
田中 啓文
内容(「BOOK」データベースより)
上方落語の大看板・笑酔亭梅寿のもとに無理やり弟子入りさせられた、金髪トサカ頭の不良少年・竜二。大酒呑みの師匠にどつかれ、けなされて、逃げ出すことばかりを考えていたが、古典落語の魅力にとりつかれてしまったのが運のツキ。ひたすらガマンの噺家修業の日々に、なぜか続発する怪事件!個性豊かな芸人たちの楽屋裏をまじえて描く笑いと涙の本格落語ミステリ。
「え?こんなヤツが落語?」というギャップとか、どの話にも落語のお題に合わせた事件とその謎解きが準備されているところとか、『どこかにあったよね、こんな話』…な雰囲気の短篇集(笑)
でも、'04年12月に単行本で出版されたものの文庫化とのことなので、世に出たのはこちらの作品のが先らしい。
(例のドラマは'05年1月放送)
そう考えると「先取りしていた」ってことなのね。
主人公の竜二が師匠・梅寿の元に連れられて来て、無理矢理弟子入りさせられるオープニングはテンポがあって読みやすく物語の世界にスムーズに入っていける。
取り上げる落語の内容に合わせた事件の組み立てや謎解きもけっこう面白く読めた。
惜しいなと思うのは、竜二が「落語」に反発するときの動機付けがちょっと弱いというか曖昧な部分。
竜二の気持ちの揺れが話の幅を広げている効果はあると思うんだけど、その根拠がきちんと示されないまま話が進んでしまうため、彼の心境がこちらにうまく伝わってこなかった感じ。
この揺れと、その後の気付きをもっと印象的に説得力を持って描ければ、もっと面白い作品になったと思うけどな。
それと、最初から最後までどうにも馴染めなかったのがそのネーミングセンス。
「松茸芸能」あたりはまだしも、料亭「吉凶」とかアパート「メゾン漆黒」あたりになると、なんかもう…(泣)
芸人たちの名前もかなりすごかったし。
この話だから敢えてこういう名前を付けたのかもしれないけど、それにしてもちょっと遊びすぎじゃないかな、と思った。
「たちきり線香」「らくだ」「時うどん」「平林」「住吉駕籠」「子は鎹」「千両みかん」の7編を収録。
同じ人物の行動が視点を変えることで全く違った意味を持つ、ということを描いた「住吉駕籠」が印象に残った。
<著者関連サイト>
■田中啓文のふえたこワールド
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