舞城王太郎/山ん中の獅見朋成雄(シミトモナルオ)
山ん中の獅見朋成雄
舞城 王太郎
内容(「BOOK」データベースより)
僕の首の後ろにも、他人よりもちょっと濃いめの産毛が生まれたときから生えていて、これが物心ついたころから僕の抱えた爆弾だったのだけれど、十三歳になってすぐのある晩、自分の鎖骨をこすっていて、そこにいつもとは違う感触を感じてうつむいて、首元に赤くて長くてコリコリと固い明らかな鬣の発芽を確かめたとき、それまでは祖父と父と同じように背中に負ぶっているつもりだった爆弾が、気づけば僕だけ胸の上にも置かれていたと知ってショックで、その上さらにその導火線にとうとう火が点けられたのを実感して、僕は絶望した。―福井県・西暁の中学生、獅見朋成雄から立ち上がる神話的世界。ついに王太郎がその真価を顕し始めた。ゼロ年代デビュー、「ゼロの波の新人」の第一走者が放つ、これぞ最強の純文学。
図書館で見掛けて、知らないタイトルだったので新刊かと思ったら3年も前に出版された作品だと知って驚いた。
確かにその頃からあまり読まなくはなっていたけど、一応新刊のチェックくらいはしていたつもりだったんだけど。
それともチェックはしたけど、記憶から消えていたのかな。
舞城王太郎の文章は、リズムがあって好き。
一文一文はけっこう長いのに、細かく読点で区切られる文章のリズムが心地いいのでそれに乗せられてどんどん読み進むことが出来る。
この作品もそれでもリズムの心地よさとか選ばれている言葉の面白さでスルスル読めてしまった。
その一方で、内容が「何が何やら…」なのもいつもと一緒(笑)
それでも今回は前半はわりと普通の(推理)小説っぽい作りだったので、「お、けっこう判りやすいかも」と思っていたら、後半いきなりファンタジー(?)な世界になってしまって「あれれ…?」と思っているうちに終わってしまった…。
(それでも一応前半の謎解きはしてあるところは親切かも。ちなみに後半は『千と千尋の神隠し』をモチーフにしているらしい。ふ~ん…)
ただ、それは単純に「私に物語の真意を受け取る力がない」ということなんだと思う。
そして、そんなふうに判らないままでさえ「(判らないけど)面白い」と思わせてくれるパワーが舞城作品の一番の魅力だと思う。
この作品で印象的なのはやっぱり「擬音」。
この擬音の独特な語感もすごいけど、その独特な言葉がちゃんとその行為に対する擬音として成立しているのが素晴らしい。
そしてその音の違いで「自分が一番いい状態」を知ることが出来る成雄の繊細さがよかった。
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