斎藤美奈子/文壇アイドル論
文壇アイドル論
斎藤 美奈子
内容(「BOOK」データベースより)
「文学バブルの寵児」ともいえる村上春樹、俵万智、吉本ばなな。「オンナの時代の象徴」となった林真理子、上野千鶴子。「コンビニ化した知と教養の旗手」立花隆、村上龍、田中康夫―。膨大な資料を渉猟して分析した、80~90年代「文壇アイドル」の作家論にして、すぐれた時代論。斎藤美奈子の真骨頂。
上記の「BOOK」データベースからの引用には書いてないけど、これは「作家」論ではなく「作家論」論。
つまり作家本人やその作品を直接斎藤氏が批評するということではなく、彼ら及びその作品が周囲からどう批評されたかを読み解くことで、その作家の本質に迫るというアプローチ。
これが面白かった。
直接その素材について語るよりもこのくらい対象と距離がある書き方のほうが視界が広くなって色んなものが見えてくる感じ。
もちろんそれは斎藤氏の分析力、構成力、文章力のおかげだと思うし、更には俎上に上げられた作家たちが「アイドル」であった頃から20年という時間が経過したということも多分にあるだろう。
(それでも多少の差こそあれ全員が現在も現役で活躍する作家であるのはやっぱりスゴイ)
それにしても驚くのはその引用の幅広さ。
その作家、その著作について語られた文章とは言っても、それがそのままのタイトルがついて本になっているケースなんてよほどの文豪でもない限り稀なことだと思う。
実際、この本の中で取り上げられている引用も当時の雑誌や新聞の記事などがかなり多い。
でも、「雑誌や新聞の記事からの引用」って実はすごく大変だよね。
だってそれって消耗品だから。
昨日ネットニュースに載ってた記事を書き写すなら簡単だけど、20年前の新聞・雑誌の文章を引用するまでにどんな苦労があったことか!
もちろんそんな苦労話が語られることは(あとがきでさえ)ないし、そして集められた引用が惜しげもなくふんだんに使われているからこそこの作品は面白く仕上がっていると思う。
斎藤氏の気っぷのよさが十二分に発揮された切れ味のいい作品。
面白かった。
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