平岩弓枝/道長の冒険 平安妖異伝
道長の冒険―平安妖異伝
平岩 弓枝
内容(「BOOK」データベースより)
平安京に異変が起きた。ものみな凍りつき、春が来ない。頼みの楽士・真比呂は、根の国の主・無明王に連れ去られたままだ。愛すべき虎猫の化身・寅麿を従え、青鹿毛の名馬に跨り、名笛・小水龍を携えて、若き藤原道長は海を渡る―京の民を救うため。物の怪どもと戦うため。途中雷神の子らや赤目の美猫・紅眼児が加わり、妖魔との死闘は続く。大好評『平安妖異伝』に続く痛快長編。
面白かった。
連れ去られた真比呂を尋ねて道長が無明王の支配下にある様々な国を旅する中で現れる妖異と戦うという設定のいわゆる「冒険譚」。
とは言っても特にビックリするような展開があるわけではない。
道長や従者の寅麿が敵の攻撃にあって危機に陥るところはもちろんあるけど「あぶない!」と思った次の瞬間には何らかの援軍が現れて救ってくれるし、何より道長自身がどんな状況になっても慌てず騒がずの落ち着いた態度で終始しているため「ハラハラドキドキ」といった感覚はない。
全体的にかなり淡々と進んでいく印象。
でも、その落ち着いた作風が却って私は好きだったな。
特に道長と寅麿の関係がいい。
従者である寅麿が道長へ寄せる尊敬、主人である道長の寅麿への感謝の気持ち。
いつ終わるとも知れない未知の国への旅の空で主従2人がお互いに労り合い、助け合って苦難を乗り越えてゆく姿がとても印象的だった。
藤原道長というと「この世をばわが世とぞ思ふ 望月の欠けたることもなしと思へば」なんて歌を詠んだ権力好きのオジサンってイメージが強いけど、ここに出てくるまだ若い(30代?)の道長は権力には全く興味がなく、分け隔てなく人に優しくどんな状況に陥っても希望を忘れず目指すもののために危険を顧みずただひたすら前に進んでいく、というかなり魅力的な人物像になっている。
この道長も年取ると、権力好きのオジサンになってしまうのかな~?
でも多分、これの続編はなさそうなのでそうなっていく道長は見られないのが残念…(笑)
この本の前段の道長と真比呂が2人で物の怪と戦う『平安妖異伝』という作品があるらしいので、こっちも読んでみようっと。
平安妖異伝
平岩 弓枝
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コメント
こんにちは。
私もこの作品を先に読んで、道長と寅麿の関係が素敵だなと思いました。
前巻を読んでいないから詳しいことはわからないけれど、
その前提ありきな信頼関係がいいなぁと。
その後『平安妖異伝』を読みましたが、
『道長の冒険』の方が個人的には好きです。
投稿: KOROPPY | 2006/11/06 12:43
■KOROPPYさん
こんにちは。
主従2人、立場をきちんとわきまえた上でお互いがお互いを思い遣ってる様子がとてもよかったですよね。
あと、道長が乗っている青馬が状況によって掌に載るくらいに小さくなってお家の中にも仕舞えちゃうっていうのがすごく好きでした(笑)
『平安妖異伝』は(ちょっと前の作品だからでしょうか)本屋で文庫が見つからなかったので、今日図書館に予約しました。
待ちはなかったので多分2~3日中には入手出来るかと。
また読み終わったら感想アップしますね(^^)
コメントありがとうございました。
投稿: tako | 2006/11/06 22:59