平岩弓枝/平安妖異伝
平安妖異伝
平岩 弓枝
内容(「BOOK」データベースより)
時は平安時代。西域の血を引く超能力者の少年楽師とともに、二十代半ばの藤原道長が大活躍。どの話にも雅楽の珍しい楽器が登場し、物の怪が引き起こす事件の解決に重要な役割を果たします。桜の老木の精が摂政兼家の生気を奪う「花と楽人」から、「春の館」まで全十篇。著者会心の王朝伝奇小説。
先日感想を書いた『道長の冒険 平安妖異伝』の前に来るお話。
『~冒険』で道長が根の国への旅に赴く原因となった真比呂との出会いと、彼と共に巻き込まれる数々の不思議な事件が描かれた短篇集です。
『~冒険』のほうを読むと、道長と真比呂はかなり精神的に奥深いところで信頼し合い、認め合っているといった印象を受けたので、その前にあるこの作品集では2人がその信頼を築き合っていく過程がさぞ丁寧にじっくりと描かれているのであろう、と期待して読んだのですが…何だか妙にアッサリしていて、正直ちょっと物足りないなあ、という感想^^;
確かに、この物語の中でも2人はそれなりに相手を信用し認めていて、物語が進むにつれその度合いが増していくのも判るけど、1年の後にあんなに献身的に道長が真比呂を探して、命まで投げ出す覚悟で旅をするほど親しいって感じには見えないんですよねえ…。
しかも道長自身、『~冒険』のなかで見られるような思いやりと強い意志や勇気、深い思慮に溢れた人物という感じではなく、単にちょっと物分かりのいい貴族の御曹司って感じだし。
この1年で道長に何があったのだ(笑)
とはいえ、物語自体は面白く読みました。
道長がはからずも巻き込まれる不思議な事件を、宮廷の楽師であり若いながらも誰よりもよく楽器を操る真比呂が不思議な力でもって解決するというストーリー。
ちょっと『陰陽師』っぽいけど、全ての事件にいろんな形で「楽器」が関わっており、その楽器の「想い」を真比呂が解放することで解決するというところにオリジナリティがあって面白かったです。
「花と楽人」「源頼光の姫」「樹下美人」「孔雀に乗った女」「狛笛を吹く女」「催馬楽を歌う男」「狛麿の鼓」「蛙人」「象太鼓」「春の館」の10編を収録。
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コメント
こんばんはー。
>何だか妙にアッサリしていて、正直ちょっと物足りないなあ、という感想^^;
うんうん。
この2人が1年後にあんなに信頼しあうとは、
ちょっと想像つかないですよね。
間にもう1冊くらい挟みそうな距離感で。
それなりに面白いんですけれど、続編の雰囲気を期待していたので、
ちょっとあてが外れた感じがしました。
投稿: KOROPPY | 2006/11/20 19:00
■KOROPPYさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
>間にもう1冊くらい挟みそうな距離感で。
ですよね~。
この作品の道長と、『道長の冒険』で真比呂の救出のために死をも恐れず旅を続ける道長とは随分温度差があるような気がするのですが…。
登場人物に、というより作家の方に何か心境の変化があったのでしょうか?
今となってはもう不可能ですが、ちゃんと出版された順番通りに読んだらどんな感想を自分が持ったのかがとても気になります(笑)
投稿: tako | 2006/11/22 23:26