« faviconをリニューアル | トップページ | 最近の「ソーラーカーの旅」って… »

2007/02/17

坂木司/切れない糸

切れない糸
坂木 司
4488012051

内容(「BOOK」データベースより)
俺、新井和也。家は商店街によくある町のクリーニング屋さ。新井と洗いをかけた「アライクリーニング店」が屋号。年じゅうアイロンの蒸気に包まれて育った俺は、超寒がりときている。大学卒業をひかえたある日、親父が急死した。就職も決まっていない俺は、しかたなく家業を継ぐことに。おおざっぱな性格の母親、アイロン職人のシゲさん、そして長年パートとして店を盛り立ててくれている松竹梅トリオの松岡さん、竹田さん、梅本さんに助けられ、新たな生活がスタートしたんだ。目下のところクリーニング品の集荷が、俺の主な仕事。毎日、お得意さんの家を訪ねては、衣類を預かってくるというわけ。ところが、あるお得意さんから預かった衣類は…。『青空の卵』『仔羊の巣』『動物園の鳥』で絶賛をあびた坂木司待望の新シリーズ。

「引きこもり探偵」シリーズ(この呼び名、好きじゃない)に続く坂木司さんの新シリーズ。
父親の急死によって稼業のクリーニング屋を継ぐことになった和也が巻き込まれる(引き寄せる?)厄介事や不思議を、和也の友人で同じ商店街の喫茶店でバイトしている沢田が驚くべき観察力で解き明かす…というパターンの連作短篇集。
「グッドバイからはじめよう」「東京、東京」「秋祭りの夜」「商店街の歳末」の4編を収録。

面白かった♪

ちょっと頼りない主役が持ち込んでくる厄介事を、冷静なその友人が解決する、という関係は前シリーズと同様。
でも、あまりにもその人物設定がエキセントリック、かつ関係が濃密過ぎることに違和感を感じてしまい肝心の物語には今ひとつ集中できなかった前シリーズに比べ、この作品に登場する和也と沢田は取っつきやすい「普通の青年」度が高く、その分物語の中に自然に馴染んでいてとても読みやすかった。
(似てるところもあるんだけどね。濃さが違う。「司と鳥井」は「和也と沢井」をすご~く目の細かい布で3回くらい漉してまたその上澄みだけを取りました、的なキャラだったもの。それはそれでスゴイけど、ちょっとキャラ強すぎだよね(笑))

で、その普通の青年である2人が日常的なものだとはいえ、あちこちの家の厄介事、謎に巻き込まれるための設定として「クリーニング屋」を持ってきたアイディアが秀逸。
人との関係が薄れてみなそれぞれが疑い深くなり「個人情報」の言葉によって全てが隠されていくこの時代の中で、「他人の家のヒミツ」を少しでも知ることの出来る機会がある立場を設定するって難しいと思う。
そこに「ご用聞き」。なるほど、その手がありましたか。
しかもお米屋さんや酒屋さんのように自分の店にあるものを届けたら終わりの店ではなく、顧客のものを預かって加工(洗濯)してまた返すという双方向コミュニケーション(?)が成立するクリーニング屋を選んだところが上手い、と思う。
この設定のおかげで和也が他人の家の内情を垣間見ることが出来る、という普通はあまりない状況にも無理のない説得力が与えられている。
そこで出てくる厄介事や謎の真相も、いかにも普通の家で起こりそうなことだと納得できるものばかりなのがよかった。

そうして他の家の厄介事を解決するパートと、父の急死により不本意ながらクリーニング屋を始めた和也がその仕事と人との関わりを通して人間として、そしてクリーニング屋のプロとして少しずつ成長していく姿が丁寧に描かれているパートが違和感なく融合しているのも読みやすかったし、物語に広がりと奥行きを与えていたと思う。

冷静で観察力が鋭くて、人当たりがいいのにあまり人に近づきすぎないというキャラクターを与えられた探偵役沢田の描き方もよかった。

シリーズ化されるようなので、次回作も楽しみにしたい。


もしよかったら他の作品の感想もどうぞ。
青空の卵
仔羊の巣
動物園の鳥

青空の卵
坂木 司
4488012892
仔羊の巣
坂木 司
4488012914
動物園の鳥
坂木 司
4488012965

|

« faviconをリニューアル | トップページ | 最近の「ソーラーカーの旅」って… »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

読了本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29699/13946469

この記事へのトラックバック一覧です: 坂木司/切れない糸:

« faviconをリニューアル | トップページ | 最近の「ソーラーカーの旅」って… »