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2007/02/13

三雲岳斗/聖遺の天使

聖遺の天使
三雲 岳斗
4575510823

内容(「BOOK」データベースより)
15世紀のイタリア北部、湖水地方。嵐の夜、湖畔にたつ城館で、主人が壁に磔の格好で死んでいるのが発見された。同時に闇の中に天使の姿も出現したという。館には聖母子の姿を浮かび上がらせる奇跡の香炉―聖遺物が存在し、各地から聖職者らが派遣されていた。事件を解決すべく、ミラノからレオナルド・ダ・ヴィンチが乗り込む。ダ・ヴィンチの天才頭脳が、隠された謎を解く。

若き日のレオナルド・ダ・ヴィンチを探偵役にしたミステリー。
文庫版の表紙が目を惹いたので何気なく手にとって読み始めた作品だけど、かなり面白かった。

何がいいかというと、やっぱりダ・ヴィンチの性格の悪さ加減でしょう(笑)

最近いわゆる「日常の謎系」のミステリーを読むとどうも気分的に収まりが悪くて、感想も「イマイチ…」になりがちだった。
「なんでかな~」ということを考えるともなく考えていたんだけど、これを読んでそれがハッキリした。
ミステリーの探偵役は性格が悪いほうが面白い、ということ。
(少なくとも私はそう思う)

だって、探偵役って思わせぶりだし、自分ばっかり納得して他人にはそれを出し惜しみするし、周りで何が起こってようと自分の考え以外は関知しないし、それでいて周りの人間が状況を察しないと呆れたりイラついたりするし…ってかなり勝手な人間だと思うんだよね。
でも、読者を煙に巻いたまま物語を最後まで引っぱって行くにはそういう「のらりくらり」と核心をはぐらかす作戦は必要でしょう。
判ったことがあるたびに「これはね、こういうことなんですよ」って懇切丁寧に説明してくれる探偵役がいるミステリーって…多分、その場はスッキリするけど物語全体として面白くないと思う(笑)
だから、探偵役は我が儘で頭は切れるけど空気を読む気がなくて、勿体ぶりで、なんか勘に障る(でも最終的には許されちゃう)というタイプ(←誰?(笑))がいいんじゃないかと思うんだよね。
それに対して(すごくザックリした意見になってしまうけど)「日常の謎系」ミステリーに出てくる探偵役ってだいたい「いい人」設定じゃない。
だから、その「いい人」を基準に読んでいくと、探偵としての役割を果たすために彼(女)が取る行動がどうもちぐはぐに見えてしまうことがあるんだな。
「なんでこの人がこんな持って回った言い方するんだろう」とか「そこまで言うなら最後まで喋らないか、フツー」とか「ここでそんなことしないでしょ」とか。
本のこっち側でツッコミを入れながら読んでること、けっこうよくある。
「日常の謎」というだけあって、シチュエーションが日常的で自分の立場に置き換えて考えやすいから余計にそう感じてしまう部分が大きいんだろうな。
あとは、「日常的にそんなに事件に巻き込まれる人はいません」という考えが最初から最後までずぅっとつきまとっていたりとか(笑)
そんなこんなで私の「日常の謎」系ミステリーの満足ハードルはかなり高いところにあるよ、という話なのでした。

で、一方、この作品のダ・ヴィンチの「(魅力的な)ヤなヤツ」っぷりはなかなかよかった。
パトロンであるミラノ公 イル・モーロの命令で渋々現地まで同行すると、すぐに何が起こったか、何が原因だったかを見抜くけど、それをイル・モーロにさえもまともに喋らない。
おかげでイル・モーロはイライラしてるのに、ダ・ヴィンチはどこ吹く風で彼の愛妾(と噂される)チェチリア・ガッレラーニの肖像画を描いてたり、急にふらりと出掛けたと思えばみんなで探し回っていた事件の核心に触れる重要なあるものを当然のように見つけだしてきたり…。
で、最後にはそうした彼の行動の一つ一つが整然とした理由を与えられて謎解きに繋がっていく、という展開が見事だった。

ある意味「一人舞台」状態で物語を引っ張っていくダ・ヴィンチだけど、同時にこの物語の面白さは彼一人だけの手柄ではなく、自分が雇い主なのにちっとも大事にされないのでちょっとムクれている(でもダ・ヴィンチを嫌うことはない)イル・モーロと、2人の間を繋ぐ当時の女性としては異例の教育を受けた博識で美しく聡明なチェチリアの存在があってこそ。
この3人のバランスのいい関係が、物語の中でうまく生かされていた。

ミステリーのキーワードになる「聖遺物」「天使」の使い方もよかったし、ミステリーの謎解きと同時に当時の政治的な力関係やものごとの捉え方、文化、風習なども書き込まれていて(でも難しくはなく)歴史的な興味も満足できる一冊だった。

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